【11月27日 AFP】(一部修正)英国の名門大学オックスフォード大学(Oxford University)は26日、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を否定する歴史学者と右翼政治家が参加予定となっている討論会を前に、物々しい警戒態勢に包まれた。

■賛否両論渦巻くなか、討論会当日迎える

 討論会は由緒ある同大学の弁論部が主催したもの。参加者にはホロコーストを否定する歴史学者のデービッド・アービング(David Irving)氏(69)と、極右政党「英国国民党(British National PartyBNP)」のニック・グリフィン(Nick Griffin)党首が含まれることから、両氏招聘(しょうへい)の再考を求める声が上がっていた。しかし、主催者の同大学生連合は譲歩せず、同学は討論会当日を迎えた。

 アービング氏は、ホロコーストを否定した罪でオーストリアで1年1月の禁固刑を受け服役した経験をもつ。またグリフィン党首も、ホロコースト否定を扇動したとして1998年に有罪判決を受けている。一方で同党首は、BNPは極右政党ではないと主張している。

 討論会には2人のほかにもデズ・ブラウン(Des Browne)国防相なども招かれており、自由に持論を展開することになっているという。

■「言論の自由」どこまで許容される?

 しかし、アービング氏とグリフィン党首が討論に加わることから、「言論の自由」の許容範囲をめぐり、討論会の開催そのものが論議の対象となった。

 弁論部のルーク・トリル(Luke Tryl)部長は、2人の招待は部員の大多数の支持により実現したもので、討論会への批判は話題を煽っているにすぎないと英スカイニューズ・テレビ(Sky News)に語った。

「両氏とも討論会で『ファシズムとの対決』を取り上げることに同意してくれた」

■「青少年への挑発」と批判する声も

 しかし、「差別禁止と人権に関する委員会(Equalities and Human Rights Commission)」のトレバー・フィリップス(Trevor Phillips)委員長は、討論会の開催に反対の立場だ。

 英国放送協会(BBC)の番組に出演したフィリップス氏は、「かつて英国大学学生連合の代表を務めていたものとしても、このような催しが開催されることを恥ずかしく思う。『言論の自由』が問題なのではなく、青少年への挑発が問題なのだ」と述べ、オックスフォード大の学生らに対し、「優秀な頭脳できちんと物事を考えるよう」呼びかけた。

 オックスフォード大の学生連合は5人の歴代英国首相を輩出、また1977年にはパキスタンのベナジル・ブット(Benazir Bhutto)元首相が代表を務めるなど、優秀な学生が所属することで知られる。

(c)AFP