【8月30日 AFP】ラン(蘭)の花の祖先が、恐竜が衰退を始めた8000万年前の白亜紀後期にすでに存在していたことが、ハーバード大学(Harvard University)チームの研究により明らかになった。研究結果は29日、英科学誌『ネイチャー(Nature)』で発表された

 きっかけは、ドミニカ共和国で発見された琥珀に閉じこめられた約2000万年前ハチの化石だ。

 1500万年から2000万年前、甘い蜜を求めてランに惹きつけられたこのハチは木からランの花芯に墜落。ハチは琥珀の中に永遠に閉じこめられた。このハチの体にランの花粉が付着していたのだ。

 DNAの突然変異の時期を測定する「分子時計」の手法を用いて、この花粉を検査。2000万年前のこのランが現在の種となった分岐点を特定し現代に至るランの「家系図」を描き、ランの祖先の出現時期と、その後の繁殖の系図が明らかになった。

 DNA検査により確認されたランの祖先の新種はMeliorchis caribeaと名付けられた。

 これまでは、ランの祖先の出現時期については、状況証拠に頼るしかなく、2600万年前説や1億1000万年前説など多岐にわたっていたが、今回の研究は100年にわたる論争に決着がついたといえる。

 研究チームリーダーのサンチャゴ・ラミレス(Santiago Ramirez)氏は、小惑星が地球に激突し恐竜が絶滅したことも、ランの祖先にとっては幸いしたと指摘する。恐竜の絶滅からほ乳類が台頭するまでは、ランの天敵となりうる動物が存在せず、この「空白期間」にランの祖先は急速に地球全土に拡大していったと、同氏はみている。

 現在、ランの種類は植物界最多の2万5000種。毎年100種類の新種が発表され、高値で取引される。ランの愛好家の中には珍種を求めて、はるばる遠隔地まで足をのばし、時には危険なジャングルにも足を運ぶものまでいる。

 琥珀にとじこめられた不運なハチは、ランの花の不思議な魅力を、時を越えて伝える証言者となった。

 そして現代のロマンチストにとっても、愛を伝えるのにランがうってつけの花であることに変わりはないといえよう。(c)AFP/Marlowe Hood