【7月18日 AFP】(7月19日一部修正)オーストラリアのシドニー(Sydney)市当局は17日、「Let’s Get Ready Sydney(非常事態に備えよう、シドニー)」と題した防災対策キャンペーンを開始した。ポスター、小冊子、ウェブサイトを通じて、大規模な自然災害やテロ攻撃に備えて「防災用バッグ」などを用意するよう市民に呼びかけた。

 この防災用バッグの中に入れるべきものとして、地図、ラジオ、ランニングシューズ、重要書類、電話帳、予備のメガネ、応急処置用品、トイレットペーパーなどが推奨されている。このほか、「家を出るときはネコを木綿の枕カバーに入れましょう」などのアドバイスも。

 クロバー・ムーア(Clover Moore)市長らが2年の歳月をかけて準備したこのキャンペーンは、開始早々一部メディアの嘲笑を買った。ある新聞には「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)とエルメス(Hermes)、どちらの防災用バッグを持って行こうかしら?」と迷う女性の風刺漫画が掲載された。

 緑の党(Australian Greens)党員のクリス・ヒル(Chris Hill)副市長も、政府が後援するこのキャンペーンに否定的な見方を示しており、「防災用バッグにはサングラス、浮き輪、シドニー市グルメガイド、バルセロナ(Barcelona)への片道航空券を入れるべきだ」と言ってのけた。

 「この手の恐怖をあおるキャンペーンには個人的に腹が立つ。このバッグをもってどこに行けというのか。シドニーの公共輸送機関の現状では、たちまち道路が交通渋滞を起こすのはあきらかではないか。もっとほかにやることがある」とヒル氏。 

 一方ムーア市長は、1999年にシドニー市があられを伴う激しい嵐に見舞われたことがきっかけで、このキャンペーンを始めることを思いついたと語っている。

 「こうした災害が起きたとき、自分たちがどれほど無防備なのかを思い知りました。どんな都市にもテロ攻撃を受ける可能性があることを自覚すべきです。それは紛れもない事実です。気候変動の影響で気象パターンが変化している現在、天候に関しても同様で、不測の事態に備える必要があります」

 市長はこう説明する一方で、「実は自分の防災用バッグはまだ準備していない」と、地元紙シドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)に告白している。(c)AFP