【パリ 10日 AFP】5月6日の決選投票でフランス次期大統領選に選ばれたニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)氏の夫人、セシリア・サルコジ(Cecilia Sarkozy、49)さんは、すんなりファーストレディーには納まらない人物のようだ。

■異色のファースト・レディは「変貌するフランス」の象徴?

 モデルや元老院(上院)議員秘書などを経て、サルコジ氏の妻となった、自由奔放な性格で知られるセシリアさん。「自分をファストレディーだとは思っていないわ。退屈だもの。ジーンズやカウボーイブーツで歩き回る方がいい。型にはまるのは嫌だわ」と語る。

 ルイ15世様式の家具がしつらえられた18世紀建造の大統領官邸(Elysee Palace)に、そのブルジョア的振る舞いが調和していた。ジャック・シラク(Jacques Chirac)大統領の12年間の後を受けて、茶色い髪をしたセシリアさんの入邸は、間違いなく新風を巻き起こすだろう。

 決戦投票で敗れた左派、社会党(PS)のセゴレーヌ・ロワイヤル(Segolene Royal)氏と同様にサルコジ夫妻も、前大統領の生活慣習とは一線を画している。これは多くの点で、変貌しつつあるフランス社会を反映しているといえる。

 スペイン系ユダヤ人の祖先を持つセシリアさんと、ハンガリー人とのハーフであり、四分の一はユダヤ人であるサルコジ氏は、外国にルーツを持つ点で共通する。2004年、彼女はあえて「自分にはフランスの血が一滴も流れていない」と宣言している。

■略奪婚に、駆け落ち、夫婦の歴史は波瀾万丈

 夫妻が出会ったのは1984年。セシリアさんの1回目の結婚式に、既婚だったサルコジ氏がヌイイ・シュル・セーヌ(Neuilly-sur-Seine)市長として参列したときにさかのぼる。

 最近の自叙伝によると、サルコジ氏はセシリアさんに一目ぼれし、お互いが離婚して12年後に結婚するまで、彼女を口説き続けたという。最初の結婚でサルコジ氏は男児2人、セシリアさんは女児2人をもうけており、1997年には2人の間に男児ルイ君が生まれている。

 2002年の内相就任時には、内務省内にセシリアさんの席が設けられるほどの関係を築いていた夫妻だが、今回のサルコジ氏の選挙活動にセシリアさんはほとんど姿を見せなかった。これはさまざまな憶測を巻き起こした。

 なぜなら2005年にセシリアさんは、PR会社社長とニューヨークに駆け落ち。夫妻が数か月間別居していたことがあるからだ。当時のことについてサルコジ氏は自叙伝の中で、「非常にショックだった。今でもそのことについて語るのはつらい」と記している。

■様々な憶測が飛び交う中、大統領官邸で新生活を開始

 うわさを打ち消すかのように、4月22日の第1回投票には夫妻がそろって現れ、勝利を祝う姿が撮影された。しかし、6日の決選投票に現れたサルコジ氏の横に彼女の姿はなかったが。

 型にはまったファーストレディーになりたくないというセシリアさんの主張や不仲説にもかかわらず、家族ぐるみの付き合いをしている友人は、夫妻は揃って大統領官邸に入ると意向だと話す。

 「問題もあったけれど、彼にとって彼女は本当に大切な存在。彼女は大統領と一緒にいるわ。そして、対外的な関係をアドバイスする役割を担うでしょう」と友人の1人は語る。「ファーストレディーの務めも果たすでしょう、ベルナデット・シラク(Bernadette Chirac)前大統領夫人と同様に。ただし、彼女なりの方法でね」。

 写真はパリ近郊のヌイイ・シュル・セーヌの投票所に到着し、支援者に手を振るサルコジ氏(右)とセシリア夫人。(2007年4月22日撮影)(c)AFP/THOMAS COEX