【7月11日 AFP】フランス医師会は、高たんぱく食を中心とした「デュカン・ダイエット」で知られるフランス人栄養学者のピエール・デュカン(Pierre Dukan)氏(72)に対し、副作用で数百人が死亡したとされる糖尿病治療薬を「やせ薬」として適用外処方したとして、8日間の医師免許停止などの処分を下した。

「デュカン・ダイエット」は多くの著名人から支持され、ダイエット本は数百万部の売り上げを誇る。2011年に英ウィリアム王子(Prince William)と結婚したキャサリン妃(Catherine, Duchess of Cambridge)も、実家のミドルトン(Middleton)家が挙式に備えて「デュカン・ダイエット」を導入したと報じられた。

 デュカン氏の弁護士によると、同氏は1971年、女性患者1人に糖尿病治療薬「メディアトール(Mediator)」を痩身薬として適用外処方した。この女性患者はその後、心臓疾患を発症。フランス医師会パリ(Paris)支部はデュカン氏が「倫理的義務に違反した」と判断し、8日間の医師免許停止処分とするとともに、女性患者に6000ユーロ(約78万円)を支払うよう命じた。また、カルテにメディアトールを5回処方したと記されているにもかかわらず、デュカン氏が1回しか処方していないと主張した点についても「大きな誤解を招いた」として処分対象とした。

 デュカン氏の弁護士は、同氏は現在は開業医ではないため8日間の医師免許停止は象徴的な処分に過ぎないと指摘。異議申し立てを行う方針を明らかにし、医師会はデュカン氏を目の敵にしていると非難した。

 デュカン氏は別の懲戒処分にも直面している。同氏は昨年、「適切な体重」を維持できた高校生には成績を加点するべきだと提唱し、医師会から職業倫理を逸脱していると批判されている。

 空腹感をやわらげる効果のあるメディアトールは、かつて痩身薬としてフランスで広く使われていたが、副作用で心臓の弁に異常が生じ多数の死者が出ていることが判明し、2009年に販売中止となった。2012年に発表された調査によると、メディアトールの副作用とみられる症状で、販売中止以前に死亡した人は少なくとも1300人に上るとみられる。(c)AFP