【5月2日 AFP】身体の老化をコントロールする脳の部位を特定し、実験でマウスの老化を遅らせることに成功したとする論文が1日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 論文で老化に関連するとされたのは成長や生殖、代謝をつかさどる視床下部という部位。以前から、脳が老化現象をコントロールしているのではないかと言われていたが、今回の研究で初めてその証拠が示された。

 米アルバート・アインシュタイン医科大(Albert Einstein College of Medicine)の研究チームは、視床下部内部の情報伝達分子「NF-kB」を活性化または抑制することにより、マウスの老化速度を速めたり遅くしたりすることに成功したとしている。NF-kBは炎症に対する身体反応を調節する働きがあるが、脳のニューロン(神経単位)の生成に関わるホルモン「GnRH」の量にも影響を与える。

 研究チームによると、NF-kBを活性化させるとGnRHの量が減り、ニューロンの新生が阻害されて、筋肉の衰えや肌の萎縮、骨密度の低下や記憶力低下などの老化現象がみられたという。また、マウスにGnRHホルモンを投与したところ、老化を抑制することができたという。

 ハーバード大医学部(Harvard Medical School)の2人の研究者は、同じくネイチャーに掲載された解説記事の中で、今回の研究結果が正しければ、視床下部の調整機能に治療的に介入することで加齢に伴う病気──特に炎症が関連するもの──の治療に役立てられるかもしれないと指摘している。(c)AFP