【7月19日 AFP】大量生産されているビデオゲームの備品を使って、体の不自由な人が目の動きだけでコンピューターを操作することが可能な低価格の装置を開発したとの報告が、英国の神経工学論文誌「Journal of Neural Engineering」に13日付で掲載された。

 論文を発表したのは英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)の研究チーム。この装置は、1個10ドル(約800円)未満のビデオゲーム機のカメラ2台を使って製作されており、販売価格は30ドル(約2400円)未満に抑えることが可能だという。

 装置は2台のカメラでとらえた目の動きを無線、またはUSB経由でコンピューターに送り、画面上のカーソルをマウスで操作するのと同様に目線で動かす仕組み。論文の共同執筆者は「3Dの視線追跡システムを市販システムより数百倍も低価格に作ることと、それを使ってリアルタイムのブレーン・マシン・インターフェース(BMI、脳介機装置)を組み立てること、この2つに成功した」と述べる。

 利用者にとっても、脳に電極を埋め込む高価なテクノロジーよりも、スムーズで迅速に操作ができるという。「市販のシステムと同程度の性能ながらも800倍安い、超低価格の両眼視線追跡装置を、大量生産されたビデオゲーム機器を使って作ることが可能なことをわれわれは示した」

 多発性硬化症やパーキンソン病、筋ジストロフィー、脊髄損傷、四肢に障害を持つ人たちなどがこの技術を使って、一定レベルの自立を回復できるのではないかと期待が寄せられている。研究チームによると、欧州連合(EU)域内だけでもこうしたシステムの恩恵を受ける可能性がある人は1600万人以上に上る。

 システムの機能を披露するために研究チームは、目線だけでビデオゲーム「ポン(Pong)」で遊ぶ様子を実演した動画をユーチューブ(YouTube)で公開した。チームによると、これまでこのゲームで遊んだ経験のない被験者6人が、新システムを使って「それなりのスコア」をあげることが出来たという。

 また、このシステムは、どれだけ遠くのものを見ているかという目線の距離も測定することができるので、将来的には、行きたい場所を見ればそこまで進む電動車いすの開発なども可能だとされている。(c)AFP