【3月29日 AFP】英国の男性セレブらが呼びかけている「睾丸をなでて精巣がんを早期発見する方法」は、時間の無駄であるだけでなく有害かもしれない――こんな医師の見解が、29日の英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)」に掲載された。

 女性が乳房を触るセルフチェックで乳がんを早期発見する要領で、男性も睾丸に触れてセルフチェックしようとのキャンペーンは、ポップ歌手のロビー・ウィリアムス(Robbie Williams)やイングランドのプロラグビーチーム、レスター・タイガース(Leicester Tigers)など、著名英国人男性らが率先して呼びかけている。

 しかし、南東部エセックス(Essex)州の開業医キース・ホップクロフト(Keith Hopcroft)氏はBMJ誌で、個人的な見解と断った上で、「自分の生殖腺を触ったり『大事な部位』を愛撫することは、『奇行』にあたるだけでなく、有害となる可能性がある」と非難。「睾丸の定期的なセルフチェックが有益だという証拠は何もない」と、一刀両断した。

 ホップクロフト医師によると、睾丸を定期的に触ることで腫瘍を発見する確率は極少で、5万人の男性が睾丸セルフチェックを10年間続けたところで、助かるのはわずか1人程度だという。

 同医師は「睾丸セルフチェック・キャンペーン」について、精巣がんが気付かないうちに静かに進行して死に至るとの認識に基づいたものだと指摘する。「睾丸セルフチェック」支持者らは、痛みを伴わない腫れものは初期のがんの可能性があるとして、発見する重要性を主張しているが、ホップクロフト医師によれば精巣がん患者の半数近くは痛みを経験しているという。

 真に重要なことは、男性たちに精巣がんの症状を教え、兆候が見られた場合は迅速に診断を受けるよう周知することで、「英国中の男たちを『ボールウォッチャー症』にすることではない」と、ホップクロフト医師。睾丸セルフチェックでは、良性腫瘍の「精巣上体嚢胞」を検知して要らぬ心配に陥る男性も現れるだろうと付け加えている。(c)AFP