【6月27日 AFP】毒ヘビに咬まれた場合、リンパ腺の機能を遅らせる軟膏(こう)を傷口に塗り込むと、生存時間が50%も長くなるという研究結果が、26日発表された。

 毒ヘビに咬まれて死亡する人は、世界で毎年10万人余りにのぼっており、咬まれた手または足を切断せざるを得ない患者も毎年40万人にのぼっている。現在行われている一般的な対処は、医者の治療を受けるまでの間、血流を抑えるために患者をできるだけ安静にするというものだ。

 オーストラリア・ニューカッスル大学(University of Newcastle)の研究チームは、血圧の調整と脳活動の制御に関わる分子である一酸化窒素が、急性脳卒中の患者で血圧を下げる効果があること、およびリンパ液を心臓に送り込むポンプ機構を遅らせる効果があることから、毒ヘビに咬まれた場合の治療法として一酸化窒素を放出する物質「一酸化窒素供与体」に着目した。

 ヘビ毒の多くに大型分子が含まれ、これが人体のリンパ系を通過して血流に流れ込むことは、既に知られている。

 研究チームは、一酸化窒素供与体を患部に塗り込むと、毒がリンパ系を通過する速度が遅くなり、血流への流入も遅れて、結果的に毒性の発現も遅くなるのではと予想。被験者15人の片足に毒の疑似物質を注入し、一酸化窒素供与体の軟膏を1分以内に塗った場合と塗らなかった場合で、疑似物質が鼡径部(そけいぶ)のリンパ節に到達するまでの時間を測定した。すると、塗った場合の平均到達時間は54分で、塗らなかった場合の平均13分に比べて4倍近く遅かった。

 マウスに実物の毒を注入した実験でも、上と似たような結果が出た。毒を注入したマウスに一酸化窒素供与体の軟膏を塗った場合と塗らなかった場合で生存時間を比較してみると、軟膏を塗った方で50%も長かった。

 研究チームは、「(一酸化窒素供与体の軟膏が)毒ヘビに咬まれた場合の新たな応急処置の方法になり得ることが示された。胴体や頭を咬まれた場合にも有効かもしれない」と述べている。(c)AFP