【3月20日 AFP】妊娠した女性が新型インフルエンザA型(H1N1)に感染した場合の危険性が、これまで考えられていたよりもはるかに高いとの調査結果が、19日の英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)」(電子版)に掲載された。

 H1N1の流行が始まった直後の前年4~5月に米国で女性を対象に実施された調査では、妊娠した女性が入院の必要な深刻な症状を発症する可能性は、妊娠していない女性と比べて4倍の高さだった。

 しかし、今回の調査結果によれば、妊娠した女性の危険性は7~13倍の高さだったという。

 論文によれば、オーストラリアとニュージーランドでは、前年6月1日から同8月31日の間に新型インフルに感染して集中治療室(ICU)で治療を受けた出産可能な年齢の女性は209人だったが、そのうち64人が妊娠中または出産直後の女性だったという。入院した女性のうち3分の1近くが妊娠中また出産直後の女性だったことになる。

 妊娠中の女性の死者は7人に上り、乳幼児の死者は3人、死産も4例に上った。22人が早産で、新生児用ICUで治療の必要な乳児は32人だった。妊娠中の女性に対しては季節性インフルエンザのワクチン接種が推奨されているが、ワクチンを接種していた女性は1人もいなかったという。

■過去のインフルエンザはもっと危険だった

 一方、カナダのトロント大学(University of Toronto)で救急利用の薬学を研究するスティーブン・ラピンスキー(Stephen Lapinsky)教授は、BMJ誌の解説記事で、新型インフルエンザの妊娠中の死亡率は高いものの、過去に流行したインフルエンザほど高くはないと指摘した。

 1918~19年に世界で大流行し、数千万人が死亡したインフルエンザ「スペイン風邪」では、妊婦の死亡率は最大27%だったとの研究もある。また1957~58年に200万人が死亡した「アジア風邪」では、出産可能年齢の女性の死者のうち半数は妊娠中だったとされている。

 ラピンスキー氏は「妊婦がH1N1に感染すると死亡率が上がるという証拠があるものの、妊婦に対する危険性は当初の見込みよりも低いものだった」と述べ、その理由としてワクチン接種を推奨したり、インフルエンザ感染の症状を感じた女性に早い時期から抗ウイルス薬を投与したことなどが考えられるとしている。(c)AFP