【10月20日 AFP】ドイツ・ベルリン(Berlin)で18日に閉幕した世界保健サミット(World Health Summit)では、ぜんそくや肥満といった現代病の出現を「ダーウィン(Charles Darwin)の進化論」の観点からとらえる新しい医学分野に焦点があてられた。

 この「ダーウィン医学」は、今から150年前に発表された進化論にもとづき、「人体はあらかじめ設計された装置ではなく、自然淘汰により形成されていく」とする考え方だ。

 ダーウィン医学が力を入れている研究の1つが、ぜんそくや肥満などの現代病の出現に関するものであり、これらは人体の適応(=進化)が追いつかないほど速い環境の変化によるものと考えられている。環境の変化の速さには人間の活動が寄与している可能性があり、それには「寄生虫病などの病気を根絶する努力」も含まれていることさえあるという。

 ある研究者は、先進国でぜんそく、アレルギー、自己免疫疾患が蔓延している理由は、「公衆衛生の基準の高さ」で説明できるとしている。それを裏付けるかのように、寄生虫病や細菌感染がまん延している貧困国や途上国では、そのような症例は少ないという。

 米ノースウエスタン大(Northwestern University)のウィリアム・レオナルド(William Leonard)教授は、西洋で肥満症が蔓延している原因の1つに、高脂肪・高カロリーのファストフードの普及を挙げた。しかし長期的に見ると、先史時代以来の「摂取する食べ物の量・栄養分の増加」と「それを獲得するためのエネルギー消費量の減少」の不均衡に人体が適応できていないことが原因として考えられるという。
 
 南アフリカ・ケープタウン大(University of Cape Town)のダン・ステイン(Dan Stein)教授は、不安障害とうつ病に関する研究を発表。「病気」と「防御反応」を区別することが大切だと説いた。例えば、公衆の面前で話す前には、聴衆から暴力を振るわれるわけでもないのに、体は危険に直面するかのような備えをしてしまうという。

 同教授はまた、近しい人との死別や大災害のあとのうつ状態は「完全に正常」なものであり、事故・災害・事件の被害者を一律に認知行動療法で治療することは逆効果の場合もありうると指摘した。(c)AFP/Patrick Rahir