【3月3日 AFP】新たに開発された薬が、ストレスによって誘発されるアルコールへの渇望を抑えアルコール依存症患者の中毒症状を改善するとの研究結果が前月、米科学誌サイエンス電子版(Science Express)に発表された。

 アルコールの効果を享受する能力を抑えることでアルコール依存症を治療する薬「Revia」は、すでに販売されている。だが、この新薬はストレスを緩和することでアルコールへの欲望を抑えるという。

 研究の主著者、米国立アルコール乱用・依存症研究所(National Institute on Alcohol Abuse and AlcoholismNIAAA)の臨床部長Markus Heilig氏は、行動ストレスがアルコール依存症の「悪循環」を拡大する主要因だと指摘する。つまり、アルコールを摂取できなくなると気持ちが落ち込み、ストレスを感じやすくなるのだという。

 Heilig氏の研究チームがテストした新薬は、行動ストレスへの反応を伝達する脳の領域を対象にしている。この薬には社会的不安を軽減させる効果があることが以前から分かっていたが、効果が安定的でなかったため発売には至らなかった。

 チームはマウスでのテストを終えた後、不安障害を抱えるアルコール依存症患者50人を対象にテストを実施した。被験者にはテストに先立ち、解毒治療が施された。

 被験者の半分には偽薬、残りの半分には新薬が与えられた。入院状態だった4週間のテスト期間中、すべての被験者について、アルコールに対する欲望が減少し、終了時までには大半の被験者の欲望が最小限になった。中でも、新薬を与えられた被験者ではより顕著な改善が見られた。

 研究は「観察された改善は、アルコール依存症に関連した脳の作用に特有のもののようだ」と結論付けている。

 さらに、新薬はポジティブな心象に対する脳の反応を高める一方、ネガティブな心象に対する脳の反応を弱める効果があるという。

 次の段階では、不安障害を患っていないアルコール依存症患者への効果を試す見通し。(c)AFP