【11月9日 AFP】局所進行乳がんの治療薬の鍵となる可能性のあるメカニズムが、米科学者チームによって特定された。生物学誌「Molecular Cell」が8日、伝えた。

 特定されたのは、がん細胞内のタンパク質を作るシステムにある「分子スイッチ」。がん腫瘍(しゅよう)は血液から酸素と栄養素を取り込み成長するが、このスイッチはがん腫瘍の血液供給を急激に増やす働きがある。

 局所進行乳がん腫瘍は直径2センチから10センチほどと一般的に大きく、治療を始めるころにはスモモほどの大きさになっていることもあるが、これは腫瘍の血管密度が極度に高いことによる。

 研究を行ったニューヨーク大学(New York University)のロバート・シュナイダー(Robert Schneider)博士は、「研究の結果、大きな腫瘍の発達には『分子スイッチ』が欠かせないことがわかった。この発見で、腫瘍の成長因子を根元から断つことができるようになった」と述べた。

 科学者チームは、局所進行乳がん細胞に非常に多くみられる2種類のタンパク質が、ある特定の分子の活動を活性化させる様子を観察、その結果、腫瘍の血管生成を加速させる特定の成長要因の生成が数倍になることが分かった。

「スイッチ」の発生を妨げる試薬がすでにいくつか開発されており、臨床試験で効果を示せば、従来の抗がん剤と組み合わせることも可能だ。

 研究チームは、この2種類のタンパク質をがん検診の指標として使えるのではないかとも期待している。

 局所進行乳がんは、発展途上国の乳がん発症例の半分以上を占める。がんが見つかるころには病状が進行していることが多く、治療成功率が低い。(c)AFP