【10月15日 AFP】(17日一部修正)インクジェットプリンターが臓器提供者不足を解決する---それほどとっぴな発想ではないかもしれない。そうした研究結果が12日、米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された。

 インクジェットプリンターを使って細菌や酵母、ヒの幹細胞を「印刷」することはすでに行われている。現在は、その細胞を使ってより複雑な3次元構造を作る方法の研究が進められている。

 ヒトの幹細胞を「印刷」することに成功したマサチューセッツ大学ダートマス校(University of Massachusetts in Dartmouth)のポール・カルバート(Paul Calvert)教授(材料科学)は、この細胞が生き残ることができたことで研究は「重要な節目を超えた」と語る。多層構造を作る方法が解明されれば、移植可能な臓器を作る可能性に一歩近づくという。

 米、英、日本のいくつかの研究チームは、改造した特殊なインクジェットプリンターを使って単細胞の酵母からハムスターの卵巣細胞まで、さまざまな細胞を印刷する研究を数年にわたって続けてきた。

 実験では通常、空にしたインクのカートリッジに細胞溶液を詰めて、この「バイオインク」を紙ではなくある種の成長培地の上に噴射する。

 この技術の最大の利点の1つは、細胞のパターンを簡単に、非接触方法で堆積(たいせき)させることができる点にある。そのため、後に行われた印刷が先の印刷行程から影響を受けることはない。

 前駆タンパクなどの適切な材料を使用すれば、じん帯、軟骨、角膜を作り出すことができるという。肝臓や心臓の組織の一部でも生成された場合、治療薬の実験など医療の現場で役立たせることができるとカルバート教授は語る。

 だがインクジェットプリンターを使って実物大の臓器を作り出すことができるようになるまでには、まだ時間がかかりそうだ。「10年以内に実現できれば驚きだが、30年かかってもできなければ、がっかりするだろう」(カルバート教授)。(c)AFP