【10月25日 AFP】英文学史上最も偉大な作家の1人で、文章様式にこだわる人物とみなされてきたジェーン・オースティン(Jane Austen、1775-1817)が、実は文法もスペリングも間違いだらけの原稿を書いて編集段階で修正されていたことが、英オックスフォード大学(University of Oxford)の研究で明らかになった。

 オックスフォード大英文学科のキャスリン・サザーランド(Kathryn Sutherland)教授は、オースティン原稿のデジタル化プロジェクトのため、未発表作品の手書き原稿1100枚分を研究。その結果、オースティン作品には出版前に第三者による大幅な修正が加えられていたと結論付けた。

 1811年出版の『分別と多感(Sense and Sensibility)』以降、『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』『エマ(Emma)』などの名作を次々発表し、1817年に41歳で他界したオースティンは、その死後に兄ヘンリー(Henry Austen)が「彼女のペンからは完成した小説が生み出された」と語った逸話から、文章様式に完璧主義を貫いた作家と広く受け止められてきた。英文学においてオースティンほど、1つ1つの文や言葉のバランス、句読点の位置に固執した作家はいないとされてきたのだ。
 
「だが、手書き原稿を見れば、そうした繊細な綿密さが欠けていることは一目瞭然だ」とサザーランド教授。「文字を塗りつぶした跡や棒引き線、雑然きわまりない文章――思いつくままに書いていった様子がわかる。さらに、文章のほとんどが、正しい英文ライティングの原則に反している」

 特に、オースティン作品の特徴である「洗練された句読法や風刺詩(エピグラム)的な文体」はまったく見られず、第三者が編集段階で「大幅に手を加えた」可能性が高いという。

「オースティン作品の出版を手がけたジョン・マレー2世(John Murray II)と編集者のウィリアム・ギフォード(William Gifford)間で交わされた書簡に、オースティンの文章が雑然としているためにギフォードが修正するとの内容が認められる。原稿を手直ししたのはギフォードだろう」(サザーランド教授)

 サザーランド教授がまとめたオースティン原稿のデジタル・アーカイブは、25日から「www.janeausten.ac.uk」で公開される。(c)AFP/Robin Millard