【7月15日 AFP】ドイツ・ベルリンの壁(Berlin Wall)を訪れ、現存する壁の小ささにがっかりした人に朗報だ。在りし日の姿が目の前によみがえる装置が開発された。

MauerGuide(ベルリンの壁ガイド)」はGPSシステムを搭載したポケットサイズのマルチメディア機器。ベルリンの壁はもちろん、ブランデンブルク門(Brandenburg Gate)やチェックポイント・チャーリー(Checkpoint Charlie)などの歴史的名所を訪れる際に携帯すれば、当時の壁に関する写真や映像が表示され、音声も流れる。

 音声は英語とドイツ語。団体ツアー客に邪魔されることもなく、マイペースで観光できる。

 28年間にわたりドイツを東西に分断していた灰色の壁はかつて全長155キロにも及んだが、現存するのは合計わずか3キロにすぎない。1989年に壁が崩壊すると東西両ドイツの人々によってほとんどが取り壊され、そのかけらは海外のマニアに買い取られたのだ。

 壁の崩壊から20年近くが経過し、かつての東西ドイツを見分けるものはほとんど残っていない。壁の両側で大規模な建築ブームが起こったためだ。

■博物館でレンタル利用可能

 米メディア大手ディスカバリー・コミュニケーションズ(Discovery Communications)が開発した「MauerGuide」は国内の各博物館に置かれている。

 観光客は博物館でMauerGuideをレンタル、かつて壁があった場所を訪れ、自由に楽しむことができる。レンタル期間は2時間から最長2日間まで可能で、料金は4-15ユーロ(約670-2520円)。観光ルートはいくつかあるが、22か所を巡る15キロのコースが最長だ。スタート地点はベルナウアー通り(Bernauer Strasse)。1960年代初め、壁の建設でパニックに陥った住民が、西側に行こうとアパートの窓から飛び降りる様子がテレビで放送され有名になった場所だ。MauerGuideでは当時の映像も見ることができる。

 コースの終点は、東西ドイツが統合した1990年に著名な芸術家たちによって壁画が描かれた1.5キロの壁が残るイースト・サイド・ギャラリー(East Side Gallery)。そのほかにも各地点で、歴史的背景、過去の写真、映像、冷戦の最も悲惨な時代を生きた人々の証言などを参照することができる。

 例えば、1961年に有刺鉄線を越えて西側に逃げた東ドイツの国境警備員の写真、境界線を壁で封鎖する2か月前に「誰も壁を建てようとは思っていない」と語った当時のワルター・ウルブリヒト(Walter Ulbricht)社会主義統一党(SED)第一書記の記者会見などだ。

 逃亡を図る東ドイツ国民の姿やその過程で捕らえられた人々の胸が痛む写真や、通りで抗議運動をする人々の姿も映される。当時18歳のPeter Fechterさんは、壁を越えようとして東ドイツの国境警備員に撃たれた。西ドイツ側の目撃者は恐怖のあまり助けることもできず、Fechterさんは1時間後に失血死した。

 東ドイツの秘密警察「シュタージ(STASI)」がのちに発覚を恐れて没収したという東ドイツで撮られたおぞましい写真もある。

 被害者団体は、西側に逃亡しようとして1000人以上が死亡したと推測。その多くは東側の国境警備員に撃たれたとされる。(c)AFP