【7月20日 AFP】英文学界で最も有名な著者の1人、ジェイン・オースティン(Jane Austen)が生きていれば今日の出版業界でも出版契約を獲得できるのか。そんな疑問を抱いて企画された実験の結果が19日発表され、オースティン作品のあからさまな盗作を見抜けない出版社が相次いだことが明らかになった。

 バース(Bath)で開催されるジェイン・オースティン・フェスティバル(Jane Austen Festival)の委員長、David Lassman氏は、出版契約を求めて18の出版社へサンプル原稿を送付した。送付したのは、ジェイン・オースティンの有名作品『ノーザンガー寺院(Northanger Abbey)』『説得(Persuasion)』『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』をわずかに変更しただけのもの。『高慢と偏見』は、『First Impressions』と名前をつけかえ、英文学全体でも最も有名と思われる冒頭の文章はまったく変更せずに使用した。

 だが、盗作の事実に気がついたのは1社のみ。この結果についてLassman氏は、ガーディアン(Guardian)紙に対して「がくぜんとした。歴史上最も偉大な作家の1人だというのに、オースティンの作品だと気づいたのは1社だけだった」と語った。

 同氏の元には、大手出版社を含む複数の出版社から、不採用通知が届いたという。

 ペンギン・ブックス(Penguin Books)は「手紙と『First Impressions』の一部をお送り頂きありがとうございます。あなたの作品は独創的で、面白い読物のように見受けられます」と回答している。一方、ハリー・ポッター(Harry Potter)シリーズの著者、J・K・ローリング(J.K.Rowling)の版権代理店、Christopher Littleは、作品を出版できる「確信がない」と語っている。

 唯一盗作を見抜いたのは、Jonathan Capeの編集者、Alex Bowler氏。「『First Impressions』の冒頭の2章を送付して頂きありがとうございます。この作品を読んで抱いた最初の印象は、懐疑、若干のいらだち、そして一瞬の笑いでした。おそらくタイプライターのすぐそばに置かれていることと思いますが、『高慢と偏見』を手にとり、同書の冒頭とあなたの作品の冒頭とが似すぎていないか確認することをお勧めします」と返書している。

 一方、真作の有名な文章を見抜けなかった出版社側は、その失態について躍起になって説明している。

 ガーディアン紙によると、Christopher Littleの広報担当者は「われわれが出した手紙は、表現物を丁重に拒絶するもので、標準的な回答です。既に出版されている作品との類似性には気がついており、実際、盗作の可能性についての議論がなされていました」と述べている。

 ペンギン・ブックスの広報担当者は、独創的で面白いように「見受けられる」としか言っておらず、内容は読んでいないと主張した。(c)AFP