【ロンドン 18日 AFP】英オークションハウス、クリスティーズ(Christie’s)で16日、1912年に起きたタイタニック号沈没事故を生き延びた女性が事故当時着用していた救命胴衣が6万ポンド(約1430万円)で落札された。

■生存者による手紙の複製品も落札

 ラウラ・マベル・フランカテリ(Laura Mabel Francatelli)さんは、社交界向けのドレス・デザイナー、ルーシー・ダフ・ゴードン(Lucy Duff Gordon)夫人の秘書として一等船室に乗船していた。彼女は1967年に亡くなり、事故当時彼女が着用していた救命胴衣は甥に遺された。
 
彼が救命胴衣をクリスティーズへ出品し、フランカテリさんが当時の状況を詳しく記した手紙の複製品を含む多くの品とともに、匿名の入札者によって電話で落札された。

 「私たちはボートに乗せられ、海へ送り出されました」

 「この感覚を書き記すことはできません。さらに悪いことに、船が大きく傾いたのにつられて私たちは皆、海へ放り出されそうになりました。私たちは急速に沈んでいく船がつくる波のうねりに飲み込まれないよう、船から離れるようにボートで漕ぎ出しました」

 「恐ろしすぎて、これ以上は記すことができません」と手紙にはある。

■手紙が伝える事故の様子

フランカテリさんを救ったボートには、ゴードン夫人と彼女の夫コスモ卿(Sir Cosmo)も乗り込んでいた。生存者を救命するために沈没しようとする船のほうへ戻ろうとする乗務員に対して、彼が金銭をつかませて引きとめたという話があった。しかし、フランカテリさんはこの話が誤りであると主張している。

 彼女は、船に残された生存者の救命はもともと話し合われず、コスモ卿が乗務員に金銭を渡したのは、彼らの救命作業に対して正当な補償が与えられていないと、彼が感じていたためだったとしている。この手紙の複製品は、推定落札価格の約2倍の価格で落札された。
 
■タイタニック号で使われた銀のスプーンは約1600万円

 タイタニック号で使われていた貴重な銀スプーンは、推定落札価格3-4000ポンド(約720-約950万円)を大きく上回る6600ポンド(約1580万円)という高値で落札された。

 タイタニック号は処女航海中に氷山に衝突して沈没した。多数の死者を出したこの事故は、レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)、ケイト・ウィンスレット(Kate Winslet)共演作『タイタニック(Titanic)』として1997年に映画化されている。救命胴衣にはフランカテリさんや他の生存者の署名がされており、これと手紙を合わせて8000ポンド(約1910万円)の高値がつくと予想されていた。

 写真は、ロンドンのオークションハウス、クリスティーズで16日に6万ポンドで落札されたタイタニック号生存者の救命胴衣。(c)AFP/LEON NEAL