【12月13日 AFP】ドイツのある80代の収集家が生涯をかけて集めてきた中世の武具のコレクションが13日、ベルギーのブリュッセル(Brussels)で競売にかけられる。

 ベルリン(Berlin)在住のカールステン・クリングバイル(Karsten Klingbeil)氏のコレクションは、中世の武具を集めた個人コレクションとしては世界最大で、300万~400万ユーロ(約3億800万~4億1100万円)の価値があるとされている。

 AFPのインタビューに応じたクリングバイル氏は、「人は殻を持っていないから、作る必要があったのだ」と防具美術への飽くなき興味を語った。また若い頃に装甲を着用しようと試したエピソードに触れながら「中に体を入れることはほとんどできない。われわれの今の形態は、当時とはまったく違うのだ」と説明した。

 今回競売にかけられる品には、伝統的なよろいや盾、かぶと、剣といった武具のほかに、世界中からクリングバイル氏自身が買い集めた「甲殻類」が含まれている。

■日本のタカアシガニも

 ブリュセルの競売会社ピエール・ベルジェ・エ・アソシエ(Pierre Berge & Associes)が10万~15万ユーロ(約1030万~1540万円)の推定価格をつけている甲殻類たちだ。その中には体長3メートルに達することもある世界最大の甲殻類、タカアシガニもいる。クリングベイル氏のタカアシガニは1.8メートルだ。「日本から欧州に運ぶときには、カニの非常にもろい脚を発泡スチロールで保護する特製容器で運んだ」という。

 東西ドイツ統一前の西ベルリン(West Berlin)で、不動産業で財を成したクリングバイル氏は、80年代に入るとふたつのことに情熱をかけた。彫刻と収集だ。

 今回競売にかけられる骨董品コレクションの中のハイライトは、装飾がほどこされた16世紀末のよろいで、全体に木の葉と戦場の風景が彫り込まれている。イタリアの工芸家ポンペオ・デッラ・チェーザ(Pompeo Della Cesa)の作品で、25万~30万ユーロ(約2600万~3100万円)の価値があるとされている。

 今回のオークションに関わった鑑定家2人のうちの1人、フィリップ・ミシリエ(Philippe Missillier)氏は「規模から言っても、博物学的な性格から言っても、このコレクションは非常に優れている」と太鼓判を押す。

 クリングバイル氏は、コレクションを手放すのは心が痛むが、競売で得られる収益が自分の相続人のためになってほしいと語った。(c)AFP