【8月17日 AFP】米ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)の研究チームは16日、男性用の経口避妊薬(ピル)の開発に期待を抱かせる画期的なマウス研究の結果について、米医学誌「Cell(細胞)」で発表した。

 研究結果によると、当初、同大の創薬研究センターが抗がん剤の候補として研究を進めていた化合物には、マウスの精子形成を一時停止させる作用があることが明らかとなり、また化合物の投与を止めると精子形成能力は回復し、誕生した子どもも健康だったという。

 がん誘発遺伝子「BRD4」を妨害する目的で作られた化合物「JQ1」は、精巣での精子形成に重要なブロモドメインタンパク質「BRDT」にも結合することが判明。JQ1がBRDTに結合すると精子が著しく減少し、また精子の運動能力も低下した。マウスは実質的に生殖能力のない状態になった。

 JQ1が有効性のひとつは小分子であるため、精巣内部で血管と精子形成細胞の間の物的障壁をかいくぐることができる点だ。

 現時点において、コンドームかパイプカット(精管切除術)に限られている男性の避妊方法。一時的に生殖能力をなくす簡単な方法が求められている。

 ただし、JQ1はBRDT以外の他のブロモドメインタンパク質の仲間とも結合するため、JQ1だけでは望む結果は得られないだろうと、同センターのMartin Matzuk所長は補足している。それでも同所長は、今回の研究によるデータはBRDTが男性の避妊に関して有効なターゲットになることの証明であり、将来の男性用ピル開発に有益な情報をもたらすものだとした。(c)AFP