【6月27日 AFP】たくさんの数字を見るとクラクラするのは、芸術家肌の人だけに限らないようだ――科学者たちも多くの数式を読むのは辛いと感じていることを指摘する研究結果が25日発表された。

 1998年に主要学術誌3誌に掲載された環境と進化に関する論文約650本について、英ブリストル大学(University of Bristol)の研究チームが分析した結果、数式が多い論文ほど将来、他の論文に引用されることが少ない傾向が明らかになった。理系の科学者でも、詳細な数式がびっしり並ぶ論文には関心を向けない傾向があると言えそうだ。

 同研究によると、数式が多い論文が他の論文に引用される率は、数式が少ないか、数式をまったく用いていない論文に比べて50%も低かった。

 主著者のティム・フォーセット(Tim Fawcett)氏は「重要な問題だ。科学のほとんどすべての分野は数学理論と実験研究に密接につながっている。新しい理論がその発表方法ゆえに他の科学者たちを尻込みさせてしまうとすれば、そうした新理論の検証に必要な実験を実施する者がいなくなってしまう。これは科学の進歩に対する障害だ」と懸念している。

 共著者のアンドリュー・ヒギンソン(Andrew Higginson)氏は、文章による説明を増やすことで、論文を読む他の科学者が理解しやすくなると助言している。「科学者たちはもう少しよく、自分たちの研究の数学的詳細の示し方を考えるべきだ。理想的な解決方法は数式をまったく隠してしまうことではなく、読者がその理論の仮定や含意をじっくり検討できるようもっと説明文を増やすことだ」

 この調査結果は、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された「数式の多用は生物学者同士のコミュニケーションを阻害する」と題する論文にまとめられている。(c)AFP