【11月5日 AFP】世界最古の形成外科手術は、紀元前600年にインドの医師が行ったと考えられる――。インド・ニューデリー(New Delhi)で前月開幕した「科学技術の遺産展」は、科学技術はもっぱら西洋で発展してきたという歴史観に挑戦しようとするもので、展示物には冒頭のような説明も見られる。

 インドにおける科学技術の発展に焦点を当てたこの展覧会は、来年同地で英連邦の総合競技大会、コモンウェルス・ゲームズ(Commonwealth Games)が開催されるのを前にインドを宣伝すると共に、1947年に独立するまで2世紀近く続いた英国の植民地支配を経て忘れられがちなインドの誇るべき遺産に光を当てることが目的だという。

■世界最古のインド医学

 世界初の形成外科手術は、「医学の父」ヒポクラテス(Hippocrates)より150年も前に生きたススルタ(Susruta)という医師により行われたとされる。ススルタの名前は、現在でも、インド各地の多くの病院名に冠されている。

 ある専門家によると、ススルタがインド北部で、額の皮膚を鼻に移植するという鼻の再建手術を開拓したという公式記録が残っている。 当時のインドでは、犯罪人が罰として鼻を切断されることがよくあった。

 ススルタは、650種類の薬、300通りの手術、42通りの外科処置、121種類の医療器具について詳述した「ススルタ大医典(Susruta Samhita)」の作者であるとも考えられている。

 また、これをはるかにさかのぼる紀元前3000年~紀元前1000年に編さんされたヒンズー教の聖典「ヴェーダ」には、早くもインド医学に関する記述がある。

■さまざまな分野の業績が一堂に

 展覧会では、主に鉄器時代以前のインドにおける錬金術、天文学、栽培技術、計測学、金属学の業績が展示される。

 企画に携わったある物理学者は、「ゼロ」という概念を初めて発見したのもインド人だと強調する。

 紀元後の技術に関する展示も盛りだくさん。800年頃の亜鉛製錬術、400~1000年の天文学の画期的発見など。紀元前2500年までさかのぼるとされる、インドの農民たちが開発した多毛作技術についても展示されている。(c)AFP/Pratap Chakravarty