【5月27日 AFP】わずか200年前まで、ニュージーランド周辺の海には数万頭のクジラが、英国の沿岸にはサメが泳ぎ回っていた――。カナダ・バンクーバー(Vancouver)で26日に開幕した、海洋生物に関する国際プロジェクト「Census of Marine Life(海の個体数調査)」の会合で、こうした調査結果が明らかになった。

「Census of Marine Life」は、各国の研究者ら約100人が参加し、海洋の状態に関する歴史的視点からの研究や、技術の発展が海洋生物に与える影響の研究などを行うプロジェクト。地質学や植物学、考古学的側面からも研究が行われる。2010年に、10年間にわたるプロジェクトの最終報告書を出す予定になっている。

 会合に出席したアイルランド・ダブリン(Dublin)にあるトリニティカレッジ(Trinity College)のポール・ホーム(Poul Holm)教授はAFPに対し、「漁業や生息地の破壊によって、世界中で海洋生物の減少がみられる。初期の漁業の影響は大きく、海洋生物に対する影響は想像もつかない早さでどんどん大きくなってきている」と指摘する。

 漁業革命は1600年代に起こった。漁船が2艘1組になり、漁網を使って漁を行うというものだ。その後、1800年代に大規模漁業が開始された。

 研究によると、そう遠くない昔には、海洋生物の種類は現在よりも豊富だった上、魚も大型で、捕食者も数多くいたという。しかし、中世になり欧州で大規模漁業が始まると、魚は小型化し始め、種類も減少し始めた。

 捕食者の個体数も、今日では、19世紀初頭の10-15パーセントにすぎないという。

 100年前には、体長1.5メートルもあるタラがよく売られていたというが、現在のタラは大きいものでも約50センチほどだ。これは過剰採取と捕獲時期が早まったためだとされている。タラの寿命も10年から2.8年と非常に短くなった。

 ニュージーランド周辺の海で、1800年代には2万2000-3万2000頭が生息していたとされるクジラも、1925年には約25頭に激減していた。現在は、同国南岸沖に1000頭程度生息しているという。

 歴史研究家によるとニュージーランドでは13世紀に入植が始まったが、当時、ゴウシュウマダイは入植者の数の7倍以上いたという。

 研究対象となった海域では、1000年以上にわたって人類の活動による変化が起こっていることが明らかになったが、ここ20-30年は特に、急激な変化がみられるという。

「海の個体数調査」の会合は、28日まで開催される。(c)AFP/Virginie Montet