【10月31日 AFP】恐竜の王といわれる肉食恐竜「ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex、T・レックス)」は、夜間でも遠く離れた場所にいる獲物を「嗅ぎつける」鋭い嗅覚をもっていたことが明らかになった。カナダ・カルガリー大学(University of Calgary)などの合同研究が29日、「英国王立協会紀要(生命科学版、Proceedings of The Royal Society B)」に掲載された。

 これまでの研究では、T・レックスが恐竜の王といわれる理由について、ワシよりも視力が良いことや足が非常に速かったことが指摘されていたが、今回の研究で「恐ろしく鋭い嗅覚」というもう1つの理由が加わった。

 数百万年にわたって地球上をわがもの顔で歩いていたT・レックスも、6500万年前の白亜紀末期ごろに絶滅してしまい、当然、脳などはまったく残っていない。

 カナダ・アルバータ(Alberta)州にあるカルガリー大学のダーラ・ゼレニツキー(Darla Zelenitsky)氏を始めとする3人の研究チームは、T・レックスやほかの肉食恐竜、初期の鳥類など数十種の嗅覚を斬新な方法で調べた。

 その方法とは、頭蓋(ずがい)骨の化石を調べ、嗅覚を司る脳の一部である嗅球(きゅうきゅう)によってつけられたくぼみの大きさを測定することだった。嗅覚を使って獲物を探す動物は嗅球が大きいが、調査の結果、対象とした恐竜の中でもT・レックスが、身体のサイズと比較して最も嗅覚が発達していたことが判明したという。

 今回の研究では、初期の鳥にも高度の嗅覚が備わっていたことも明らかになった。これは、翼を持つ脊椎動物の進化におけるこれまでの仮説を覆しかねない発見ものだという。(c)AFP