【10月28日 AFP】ヒグマとホッキョクグマの共通の祖先が約160万年前にいたことが、フランス南部のショーベ洞窟(Chauvet Cave)で発見されたクマの骨の分析から明らかになった。フランスの研究チームが、27日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表した。

 このクマの骨は保存状態が良く、放射性炭素年代測定法により、3万2000年前のものであることが判明した。ショーベ洞窟は、世界最古とされる同じ頃の石器時代壁画で知られている。

 ホラアナグマは約30万年前に登場し、約1万5000年前に絶滅した。欧州と中東に分布していたとされ、ショーベ洞窟の骨もホラアナグマのものであると推定できる。

 フランス原子力庁(Atomic Energy CommissionCEA)の生物学技術研究所のチームは、この骨から母性遺伝すると考えられる「ミトコンドリアDNA」の断片を集め、それらを再構築して配列した。次に、このサンプルを基に、遺伝子変化の規則性に焦点を当てた「分子時計」と呼ばれる手法を用いて、ホラアナグマらの祖先の年代を測定した。

 その結果、ホラアナグマはヒグマとホッキョクグマの近縁にあたり、これらすべてに共通の祖先を約160万年前までさかのぼれることが判明した。

 地下に埋まっていた先史時代の動物の遺がいからミトコンドリアDNAが再構築されたのは、今回が始めてだ。

 洞窟という環境は、化石にとって最適な保存環境とされる「極寒」にはやや劣るが、中の気温は年間を通じて摂氏12-15度に保たれ、紫外線も防ぐことができる。

 チームは「今回の研究は、絶滅した様々な種の遺物が保存されている洞窟のような環境から、ミトコンドリアゲノムを完全に再現できる可能性を示したものだ」と指摘する。(c)AFP