【9月11日 AFP】イタリアのベスビオ(Vesuvius)火山が、紀元79年にポンペイ(Pompeii)の町を破壊したような大噴火を起こす可能性は否定できないとする、フランスとイタリアの合同研究チームの論文が10日、英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。

 ベスビオ火山は歴史上、常に気まぐれな活動をしてきた。大量のちりや毒性の超高温ガスを噴出するときもあれば、溶岩が山腹をゆっくり流れるだけの比較的危険性の少ない場合もあったが、1944年以降は休火山の状態だ。

 ただし、研究チームは論文で、ベスビオ火山の休止状態が永遠に続くわけではないとの見解を示した。

 論文によると、ベスビオ火山のマグマ溜(だま)りは地下深くにあるものの、過去2万年で着実に地表に近づいており、現在最も地表に近いところでは地下8キロのところに位置するという。

 マグマ溜まりの深さは、マグマの化学組成やエネルギーの放出のし方を決めるもので、地表に近いマグマの組成を特定することは重要だという。

 チームを率いる仏オルレアン(Orleans)にある地球科学研究所のBruno Scaillet氏はAFPに対し、マグマの組成がより酸性であれば、ポンペイを破壊した時と同様、極めて強烈で危険な噴火が予測され、このような場合は約70万人に危険が及ぶ可能性がある。一方、主に玄武岩組成のマグマは、1944年に起きた最後の噴火のように熔岩流出型となり、破壊力ははるかに少ないという。

 ベスビオ火山は過去64年にわたり沈黙を続けているが、これはマグマが充満している最中で、つまりマグマ溜まりの上部がふさがれた状態となっているためである可能性があるという。

 もしそうならば、ボルトで締められた圧力鍋の蓋のように火山が噴出する可能性もあり、Scaillet氏は「このようなシナリオも否定できない」と警鐘を鳴らした。(c)AFP