【4月22日 AFP】宇宙論や量子重力理論で知られる英国の天体物理学者スティーヴン・ホーキング(Stephen Hawking)博士(66)が21日、米航空宇宙局(NASA)創設50周年の記念式典で講演し、「宇宙征服の新時代」をクリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)の新世界発見になぞらえた。

「ある意味、状況は1492年以前の欧州に似ている。コロンブスをあてのない探検に送るのは時間の無駄だといった議論もあっただろう。しかし新世界の発見により、旧世界とは大きな違いがもたらされた。例えば、ビッグマックやKFC(ケンタッキーフライドチキン)はなかったはずだ」。ホーキング博士は米ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)で行われた講演で、世界中に展開する米国のファストフード・チェーンの名前を挙げながら語った。「宇宙に展開することは、さらに大きな変化をもたらすだろう。人類の未来を完全に変えるだろうし、われわれに未来があるのかどうかさえ決定しうる」

 ホーキング博士は、30年以内に月面実験基地を建設することや、今後200年から500年以内には、人類を太陽系外の惑星探査に送り込むための新たな推進装置を考案することなど、長期の宇宙探査プロジェクトを視野に入れている。

「地球上に存在する緊急の問題を解決することにはならないだろう。しかし、そうした問題に対する新たな視点を与えてくれるだろう。そして、共通の課題に立ち向かうために、人類を一致団結もさせてくれるかもしれない。宇宙に向かうことはなまなかなことではない。しかし、世界の資源のほんのひと握りでできる」

 ホーキング博士は20歳の時に、運動神経細胞の変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症。全身の大半がまひし、話す時には音声合成装置を手放せない。しかし1年前、博士は車いすを下り、特別機の中で無重力状態を体験した。

 博士は英資産家リチャード・ブランソン(Richard Branson)氏率いるヴァージングループ(Virgin Group)の宇宙航空部門ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)が2009年に計画している初の民間宇宙旅行で、無重力状態を再び体験したい意向だ。(c)AFP