【1月15日 AFP】「ワインボトルに実際より高い価格表示をすることで、味わう側の喜びを高めることができる」との研究結果が14日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 米カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)のアントニオ・ランゲル(Antonio Rangel)准教授(経済学)率いる研究チームは、マーケティング戦略が消費者の知覚にどのような影響を与えるか、また、それが消費者の喜びを高めるかどうかについて調査した。

 実験では21人の被験者が、ワインの価格だけを情報として与えられたうえで、5種類のカベルネソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)を無作為に15回味見し、おいしさをランク付けした。

 被験者には、同じワインについて1回目は実際の価格、2回目は実際とは異なる価格を情報として与えた。また、90ドル(約9700円)のワインを10ドル(約1080円)、5ドル(約540円)のワインを45ドル(約4900円)と伝えた。

 その後、それぞれのワインのおいしさを被験者に聞くと同時に、被験者の脳をスキャンして、味覚や臭覚や聴覚をつかさどる「内側眼窩前頭皮質」の神経作用を観察した。

 その結果、被験者は常に「高価な」ワインほど高い評価を与えた。ワインボトルに実際より高い価格を表示すると、ワインを飲む喜びが高まることが分かった。

 また脳のスキャン結果からも、「高価な」ワインを飲んだときに神経作用が活発化することが明らかになった。つまり、実際に脳がおいしさを感じていたと考えられる。

 ランゲル准教授は「製品に対する知覚の質は、その製品の(価格を含む)属性と、その製品を消費するときの消費者の状態に左右される-科学者や経済学者の間では通説だ。たとえば、消費者がのどが乾いているかどうかといったことも知覚の質を左右する」としたうえで、「今回の研究で新たに分かったのは、知覚の質という主観的判断を、実際に脳が認識している点だ。同じワインを飲み比べて、いずれかをおいしいと感じた場合、脳でもそのおいしさを感じているのだ」と結論づけた。(c)AFP