【12月4日 AFP】攻撃的な雌のレイヨウほど、交尾の相手を得る可能性が高いとの研究結果が、11月29日発行の英科学誌「カレント・バイオロジー(Current Biology)」に掲載された。別の雌と交尾中の雄に突撃して、雄を奪うこともあるという。

 この発見は、「雌はおとなしいがえり好みをし、雄は攻撃的で誰構わず交尾をしたがる」という性行動の通説が、現実の世界ではあまりにも単純すぎることを示している。 

 研究を発表したロンドン動物学協会(Zoological Society of London)を拠点に活動するデンマークの生物学者Jakob Bro-Jorgensen氏は、「生物学者が『雌と雄の戦い』について議論するとき、それはいつでも交尾をしたい粘り強い雄と、そうでない雌の戦いだとの解釈があった」と指摘する。

 観察の結果、ケニアに生息するレイヨウの一種、トピの場合はこの解釈が当てはまらず、雌が受精を確実にするために、1日の排卵期のうちに平均4匹の雄と繰り返し交尾することが分かった。

 雌が交尾相手として望むのは、交尾が行われる場所の中央に陣取った、体格がよくて力の強い雄だ。このような雄は非常に人気が高く、1か月半にわたる発情期の最盛期には、30分に22回も交尾を行うという。このような雄がいる場所に雌が2匹現れれば、自然の成り行きで雌同士の衝突が発生する。

「まるでテレビの連続メロドラマを見ているみたいだ」とBro-Jorgensen氏は研究の感想を語っている。


 2匹の雌が同時に到着した場合、どちらか一方を追い出すまで戦いが続くことが多い。ところが、優勢な雌が人気のある雄の交尾中に到着した場合は、雄の精子を十分に受けるために、交尾が終わるのを待つのではなく、行為を妨害することが多いという。

「通常、雌は角を低くして雄に突進する。雄はたいてい飛びのくが、雌があまりに強く当たってきた場合は、怒って雌の方に向き直る」と同氏は説明する。

 これは危険な行動ではあるが、雌の思い通りになることも多い。雄がすぐに雌の方を向いて交尾することはないが、(もう1匹の)雌との交尾は難しくなり、(突進してきた)雌と交尾する可能性が高くなる。

 大半の雌は人気の高い雄以外とも交尾を行うが、卵子がより質の高い精子と受精するよう、人気の高い雄との交尾をより頻繁に行うと同氏は結論付けている。

 閉店間近のパブでの人間の行動と似ているかとの問いに対して同氏は、「うまい例えかもしれないが、人間の行動はもっと複雑だ」と笑って答えた。「この逆転した雌雄の戦いを引き起こしている主な要因の1つは、雌が頻繁に交尾をするということだ。だが、人間の場合、それは通常起こりえない。ただ、少数の雄に雌の人気が集中し、雌の間で争いが起きるのは共通している点だ」と話している。(c)AFP/Mira Oberman