【3月2日 AFP】米インターネット大手グーグル(Google)は1日、同社が提供する多種サービスのユーザー情報を統合した改訂版プライバシーポリシーの適用を開始した。グーグル側はターゲットを定めた効果的な広告表示が目的だとしているが、プライバシー侵害を懸念する欧米の消費者団体などは激しく批判している。

 グーグルは1月に、プライバシーポリシーを改訂してユーザー情報の収集方法を変え、個々のユーザーの嗜好によりマッチした検索結果や広告を表示できるようにすると発表した。ユーザーの利便性向上を図るもので、特にアップル(Apple)端末やフェイスブック(Facebook)の利用者が、その恩恵を楽しめると説明していた。

 今回の改訂によって、これまでグーグルのGメール(Gmail)やユーチューブ(YouTube)、アンドロイド(Android)OS携帯電話、SNS、ネット検索など各サービスごとに分かれていたプライバシーポリシーが統合、簡素化された。

 「改訂でも、これまでのプライバシー規定に変更はなく、グーグル外部との個人情報の共有についてもポリシーに変更はない」と同社プライバシー担当ディレクター、アルマ・ウィッテン(Alma Whitten)氏は説明する。

■新ポリシーは逃げ場のない360度監視網?

 しかし、欧米の個人情報保護機関や消費者保護団体は、いったんグーグルのサービスにサインインしてしまえば、ユーザーにはグーグルによる監視網から逃れる選択の余地がない点を問題視している。

 米連邦取引委員会(Federal Trade CommissionFTC)のジョン・リーボウィッツ(Jon Leibowitz)委員長は、グーグルはユーザーに新たなプライバシーポリシーを受け入れるか、それともグーグルサービスの利用を止めるかの二者択一しかない「乱暴な選択」を強要していると非難している。

 米消費者保護団体「コンシューマー・ウオッチドッグ(Consumer Watchdog)」のジョン・シンプソン(John Simpson)氏も痛烈に批判する。「これを『プライバシーポリシー』と呼ぶのは、オーウェル(George Orwell)の小説に出てくるようなダブルスピーク(二重語法)だ。グーグルは私たちのプライバシーを保護するなんて言っていない。彼らが言っているのは、すべてのサービスから私たちに関する情報を集めて、それを新たな方法でまとめ、大量のデジタル記録を使ってもっと広告を売りつけるということだ。つまりどうやって、私たちをスパイするかだ。これはスパイポリシーだ」

 欧州では欧州連合(EU)の個人情報保護基準に反するものだとの見方も出ている。フランスの個人データ保護監視機関「情報処理・自由全国委員会(CNIL)は、グーグルの新プライバシーポリシーは「EUデータ保護指令」に違反するとの見解を示した。

 改訂ポリシーが導入される前日の2月29日にも、欧米の消費者保護団体は連携して導入に最後の抵抗を試み、グーグルに延期を求めていた。

 一方、グーグル擁護側の立場から、デジタルメディア・アナリストのレベッカ・リーブ(Rebecca Lieb)氏も「(改訂によって)グーグルは、ユーザーを360度から完全に見渡せるようになった」と述べている。「すでにフェイスブックは同じことをやっており、しかもグーグルの先を行っている。フェイスブックは、ユーチューブであなたがどんな動画を見ているか、現時点でグーグルよりもよく把握しているが、そのユーチューブの所有者は他ならぬグーグルだ」(c)AFP/Rob Lever