【1月29日 AFP】インターネット競売大手イーベイ(eBay)は23日、メグ・ホイットマン(Meg Whitman)最高経営責任者(CEO、51)が3月末で退任すると発表した。後任には、マーケットプレイス部門を率いるジョン・ドナヒュー(John Donahoe)氏が就任する。

■無名ネット企業を「世界のイーベイ」に

 ホイットマン氏が以前務めていた大手玩具会社から、設立間もないイーベイに移るという大きな賭けに出たのは10年前の1998年。

 この賭けが成功し、イーベイは年商数十億ドルをたたき出す世界的企業に成長した。特に、IT企業株価が相次いで暴落した2000年のいわゆる「ドットコムバブル」の崩壊時には、競合他社が苦杯を味わう中、イーベイは危機を巧みに乗り切ったことで同氏は高い評価を得た。

「現在のイーベイがあるのはホイットマン氏の手腕によるところが大きい。これまで様々な決断を下してきたのは彼女だからだ」とシリコンバレー(Silicon Valley)のアナリスト、ロブ・エンデール(Rob Enderle)氏は指摘する。

■医学志望から転向、経済・経営の道へ

 ホイットマン氏は米ニューヨーク(New York)州ロングアイランド(Long Island)で実業家の父親と専業主婦の母親の家庭の第3子として生まれた。

 1974年に米プリンストン大学(Princeton University)に入学。当初は医学を専攻する予定だったが、夏季休暇中に大学広報誌の売り込みを経験したことから経済学に転向。その後、1979年に米ハーバード(Harvard)大で経営学修士号を取得した。

 卒業後、米オハイオ(Ohio)州の生活用品大手、プロクター・アンド・ギャンブル(Proctor and GambleP&G)に就職し商品ブランド事業を担当。同社で出会った神経外科医と結婚した。

 その後1981年、ホイットマン氏は夫と共にサンフランシスコ(San Francisco)に転居。コンサルティング会社での職を経て、1989年にウォルト・ディズニー・カンパニー(Walt Disney Company)の消費者製品部門に転職した。ここで科学誌『ディスカバー(Discover)』の買収や、ディズニーの日本店舗1号店のオープンなどに寄与し、名をあげた。

 しかし1992年、夫がボストン(Boston)の脳腫瘍(しゅよう)センターでの職を引き受けたことを機に、ホイットマン氏は家族と共にボストンに転居。同地の靴会社に4年間勤務した後、生花店ネットワークのFlorists' Transworld DeliveryFTD)CEOに就任した。同氏は経営難にあえぐ同社を黒字企業に転換した後、1997年に米玩具大手ハスブロ(Hasbro)の部長に就任した。

 そしてその1年後、ホイットマン氏はコンピュータープログラマーのピエール・オミドヤール(Pierre Omidyar)氏が1995年にカリフォルニア(California)州サンホセ(San Jose)に立ち上げたイーベイにヘッドハンティングされた。

■イーベイCEO就任、半年で上場企業に

 ホイットマン氏は後に、「無名のインターネット企業」からの申し出を当初は断ったことを明かしている。しかし、実際にイーベイのオフィスを訪れたことを機に気持ちは変わり、1998年3月に同社CEOに就任。その半年後には同社を上場させている。

 ホイットマン氏は、まず同社ウェブサイトのデザインを大改造したほか、広告キャンペーンを行うと同時にサンフランシスコの老舗オークションハウスButterfield and Butterfieldと交渉。イーベイを美術コレクションサイトに変身させた。

 さらに同氏は、市場開拓の一環として欧州のオンラインオークションハウスAlando de AGも傘下に収めた。

 一方で、同氏はイーベイの守備領域を拡大しながらもユーザー間の「コミュニティー」という側面も維持し、ユーザーの囲い込みに成功した。

■危機管理・事業拡大も自由自在

 また、おとり入札で美術品価格をつり上げているとの疑惑や、ナチス関連の記念品や絶滅危惧種の動物の皮などを使用した製品の入札などの問題も、巧みに切り抜けてきた。

 2003年のオンライン支払いシステムPayPal買収も、ユーザーの要望を聞き入れて同氏が決断したと言われている。

 イーベイは同氏の下で、インターネット電話の草分け的企業Skypeを買収。さらに、新興国の起業家らの資金調達を支援する新興国対象の投資仲介業Microplace.comを立ち上げた。

■ネット界の巨人にもひるまず

 ホイットマン氏は、米検索最大手グーグル(Google)に対してもひるまない。PayPalに対抗しグーグルが自社オンライン支払いシステム「Google Checkout」をイーベイユーザーに宣伝した際、同氏は報復としてグーグルからイーベイ広告を引き揚げるという前代未聞の対抗策をとっている。(c)AFP