【6月5日 AFP】国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)が両生類としては初めて「絶滅」を宣言したカエルが、実はイスラエル北部でまだ生存しており、「生きた化石」と呼ぶべき種族だったという論文が4日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 IUCNは1996年、パレスチナイロワケガエル(学名:Discoglossus nigriventer)の唯一の生息地として知られていたイスラエル北部のフーラ湖(Hula Lake)が干上がった後、このカエルを、無念の運命をたどった巨鳥ドードーと同じ「絶滅種」として分類した。

 だが、イスラエル、ドイツ、フランスの研究者からなる共同チームの論文によると、白斑のある茶色がかった体色のパレスチナイロワケガエルは、今でも生存しているばかりか、かなり珍しい「生きた化石」に分類できるという。

 論文によると、2011年10月、自然保護区の監視員が成体のパレスチナイロワケガエル1匹を小さな池の近くで発見した。「それ以降、さらに10匹(雄5匹、雌1匹、幼生4匹)の標本を、約1.25ヘクタールの保護区域内で採集した」という

 研究チームは、DNA検査などを用いて、アフリカ北部と西部に生息するイロワケガエルと、ゲノム、体形、骨格の比較を行った。その結果、驚くべきことに、パレスチナイロワケガエルは、他のイロワケガエルとは全く異なる種であった上に、「Latonia」と呼ばれるカエルの種群の唯一の現存種だったことが分かったという。この種族は、欧州では約100万年前にすべて絶滅しており、そのうちのわずかが化石になって残っている。

 パレスチナイロワケガエルは、1940年代初めに最初に発見された。この時はフーラ峡谷東部で、成体2匹とオタマジャクシ2匹が見つかった。次に目撃されたのは1955年、峡谷の水が干上がっていた時だったが、それ以降は二度と目撃されることはなかった。

「この生きた化石の生存は、過去1世紀にわたる生息環境の深刻な悪化に対して、1種の両生類が示した回復力の特筆すべき一例だ」と論文は述べている。フーラ峡谷の一部を再び冠水させ、本来の沼地の生息環境を取り戻せば、パレスチナイロワケガエルの生存確率は上昇すると考えられている。

 全カエル種の約3分の1が、IUCNの「レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)」に絶滅危惧種として記載されている。生息地の喪失、地球温暖化と貿易のグローバル化による病原菌の拡散、環境汚染などが、個体数減少の主な原因となっている。(c)AFP