【6月8日 RenewableEnergyWorld.com】ある業界アナリストによれば、そう遠くない将来、石炭に代わる新たなペレット燃料が米国のバイオマス業界を一変させるかもしれない。木を焙焼させて作る木質ペレットの1種、「ブラックペレット」だ。

 外見は動物のふんにそっくりだが、石炭を代替するエネルギー源になるという。防水性があり、従来の木質ペレットよりもエネルギー密度(容積当たりのエネルギー量)が高く、使用方法は石炭と変わらない。石炭火力発電所の所有者にCO2 ペナルティーが科される欧州には、すでに強力な市場が存在する。

 現在建設中の2つのブラックペレット工場でコンサルタントを務めるバイオエネルギー調査会社フューチャーメトリクス(FutureMetrics)のビル・ストラウス(Bill Strauss)氏は「この焙焼技術が市場で生き残れるラインを越えるのを誰もが待ち望んでいる。今のところまだ成功していない」と語る。

■安い電力を使って製造

 米ニューイングランド地方(米北東部6州)を拠点にグリーン・テクノロジーを中心に扱っている投資会社ケイト・ストリート・キャピタル(Cate Street Capital)は現在、メーン(Maine)州ミリノケット(Millinocket)のパルプ・製紙工場跡地に、年間生産能力30万トンのブラックペレット製造施設を建設中だ。

 同社の使っている焙焼技術は欧州の開発者から買いとったものだが、ストラウス氏はこの技術は「普通ではない」と言う。巨大な電子レンジで木を焙焼するという方法は、低酸素環境で木を熱処理する従来のペレット製造方法とは大きく異なっている。

「この方法が合理性を持つとすれば、それは非常に安価な電気があるときだけだ」とストラウス氏。ケイト・ストリートがこの工場跡を購入した際、発電容量10万5000キロワット、1キロワット当たりの発電コストが4セント(約3.2円)程度の水力発電所がついてきたのだ。

■事実上ゼロのCO2排出量

 ストラウス氏によれば、このペレット工場が完成した暁には生産したブラックペレットの全量を低炭素燃料の需要が大きい欧州に輸出する予定だ。「持続可能な管理下にあると認証された森林で産出された木材を原材料にしていれば――それが決定的な要件になっているわけだが――低炭素燃料と見なされる。燃焼によるCO2排出量は事実上ゼロだ」。この燃料を使用することによって欧州の電力会社は大きな炭素緩和のメリットを得られるだろうと同氏は言う。

 米国の反対側、西海岸のシアトル(Seattle)の木材加工・バイオマス燃料生産設備の設計・施工会社TSIもブラックペレット生産に乗り出している。同社は1~2年前にブラックペレット生産を始めたばかりだが、すでに「どうにか採算が取れるレベル」(ストラウス氏)で操業している。

 ブラックペレットは石炭よりもコストがかかるが、欧州で石炭を燃料にした場合に課されるCO2 ペナルティーと、ブラックペレットを燃料にした場合に受け取れるCO2ボーナスを計算に入れれば、ブラックペレットを使う欧州の発電事業者の発電コストは下がるはずだとストラウス氏は説明する。

 焙焼技術には長年の歴史があるが、これまでは費用が高すぎて実用的ではなかった。しかし今では費用と収益が拮抗する、場合によっては収益が費用を上回るケースも出てきていると思うと言うストラウス氏は、「これから1年かその程度で、ブラックペレットがペレット輸出業界を一変させる可能性もあると思っている」と話した。(c)RenewableEnergyWorld.com/AFPBB News

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再生可能エネルギー専門サイト、RenewableEnergyWorld.comにこの記事の原文(英語)が掲載されています。