【2月1日 AFP】米フロリダ(Florida)州南部では、過去10年間にウサギ、アライグマ、キツネなどの個体数が劇的に減少しており、その原因を外来種のビルマニシキヘビとする論文が、前月30日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

 論文では、東南アジア原産のこの大蛇があらゆる動物を捕食し、かつてエバーグレーズ国立公園(Everglades National Park)で頻繁に見られていた動物たちを激減、生態系を大きく破壊したと結論づけた。論文は、車道沿いで行った動物の生息数についての調査データに基づいている。

 米デビッドソン・カレッジ(Davidson College)のマイケル・ドーカーサ(Michael Dorcasa)氏らが執筆した論文によると、ビルマニシキヘビが同州南部に定着する以前の1993~99年の調査では、車にひかれたアライグマやフクロネズミ、ウサギの死骸が頻繁に見られたという。

 しかし2003~11年に行われた調査では、死骸もしくは生体が確認されたアライグマの数が前回調査から99.3%減少し、フクロネズミも98.9%の減少が見られた。オジロジカとボブキャットについてもそれぞれ約94.1%と87.5%が減少した。ウサギとキツネに至っては1匹も見られなかった。一方、同じ期間に捕獲されたビルマニシキヘビの数は、年間50匹未満から年間300~400匹へと急増している。

 エバーグレーズ国立公園では、ビルマニシキヘビがアライグマ、フクロネズミ、ボブキャット、シカ、そしてウサギを捕食することが確認されている。

■生態系に及ぼす複雑な影響

 このヘビがどのようにしてエバーグレーズに定着したのかは不明だが、大きくなりすぎたペットが手に余って放たれた可能性や、1992年のハリケーン・アンドリュー(Hurricane Andrew)が猛威を振るった際にペットショップが破壊され、ヘビの幼体が湿地帯に逃げ込んだ可能性などが指摘されている。米国では1月、ビルマニシキヘビの輸入が正式に禁止された。

 論文は生態系への影響について、「複雑を極め、予測は困難」と憂う。

 アライグマによる農作物被害などの報告は減っているが、ビルマニシキヘビが希少動物を捕食することへの懸念は膨らんでいる。また、キツネとボブキャットの減少は、ヘビに捕食された可能性のほか、捕食対象であるウサギなどの小動物がヘビに食べられたために個体数が減少し餓死した可能性も考えられている。

 一方で、クロコダイルやカメ、さらには一部鳥類の卵を捕食するアライグマが減ったことから、その個体数は回復する可能性も指摘されている。

 現在、世界の生物多様性が直面している最大の脅威は、外来種の侵入とされる。外来種の対策には、米国だけで年間1200億ドル(約9兆1000億円)が充てられている。(c)AFP/Kerry Sheridan