【9月2日 AFP】オーストラリアの研究者らは1日、タスマニアデビルを絶滅の危機に追いやっている伝染性の悪性腫瘍(しゅよう)に対し初めて免疫を獲得したと考えられていた「セドリック(Cedric)」が死亡したことを明らかにした。

 飼育環境下で生まれたセドリックは、2年前に「デビル顔面腫瘍性疾患(DFTD)」のウイルスに感染させた細胞を繰り返し注射されたあとも生き続け、研究者の間で期待が高まっていた。だがその後、X線検査で肺に複数の腫瘍が見つかり、前週安楽死させたという。6歳だった。

 DFTDは顔などに悪性の腫瘍ができるもので、交尾の際や餌となる動物の死骸を争う際にできるかみ傷を通して感染し、死に至る。猛威を振るっているDFTDにより、これまでにタスマニアデビルの個体数の70%程度が死滅した。

 オーストラリア・メンジーズ研究所(Menzies Research Institute)のアレックス・クレイス(Alex Kreiss)博士は、「セドリックは、DFTDの治療法を探す上で多くの情報を提供してくれたし、この病気に対する理解を深める重要な役割も果たしてくれた。彼の死は悲しいニュースだが、DFTDのワクチン開発に向けてようやくパズルの一部が解けたところだ」と話した。

 専門家らは6年前から、健康な個体を動物園などに隔離し繁殖させる試みに取り組んでおり、「保険」としての個体数を220匹まで増やした。2009年、絶滅危惧種に指定されている。(c)AFP


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