【7月3日 AFP】生物の多様性が減少している世界の危機的状況を2010年までに押し戻すという、国連(UN)の生物多様性条約(Convention on Biological DiversityCBD)が定めた目標は「明らかに達成されない」と、国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)が2日発表した最新報告で指摘した。

 IUCNは同報告で、世界は集団絶滅に向かって急速に突き進んでいると警告した。同団体の評価に基づく有名な「レッドリスト(Red List)」に絶滅危ぐ種として掲載されている4万4838種のうち、869種はすでに絶滅種か、野生絶滅種になったとみなしてよいという。これに近い将来に絶滅する恐れの大きい絶滅寸前種290種を加えると、合計1159種にも上る。
 
 なかでも両生類は、生息環境の消滅や菌類による感染症といったリスクで、3分の1もの種が絶滅の危機にあるという。また鳥類では8種類に1種類が絶滅の危機にあり、地域別ではブラジル、インドネシア、海洋の島々などがその先陣を切っている。哺乳類ではアジアで狩猟対象となっている種を中心に、全種の4分の1近くが同様の状況にある。

 IUCNはプレスリリースで「全体で1万6928種が絶滅の危機にある」と発表した。「世界で既知の生物種は180万種とされるうち、こうした分析がなされているのはわずか2.7%であることを考えると、絶滅種に関する数字はもっと大きいはずだ。しかし、ここで示していることだけでも、現在地球上のすべての生命体に起こっている事態の把握に役立つだろう」

 このIUCNの報告書『Wildlife in a Changing World(変わりゆく世界の中の野生生物)』の発表からまもなく、各国政府は2010年までに設定されたCBD目標の達成度の自己評価に入る。(c)AFP