【8月7日 AFP】これまでバングラデシュの陸地は今世紀末までに消滅すると予想されていたが、実際には陸地面積が増えていることが最近のデータにより判明している。

■陸地増加の要因は大河の堆積物

 ダッカ(Dhaka)の環境地理情報サービス(Center for Environment and Geographic Information ServicesCEGIS)の研究者らは、過去32年間の衛星画像を調査した。すると、バングラデシュの陸地面積が年間で20平方キロずつ増えていることが明らかになったという。

 CEGISのサーカー(Maminul Haque Sarker)氏は、ヒマラヤ山脈を水源とするガンジス川(Ganges)とブラマプトラ川(Brahmaputra)で押し流された堆積物が陸地面積の増加の要因だとみている。

 バングラデシュ中部で合流するこれら2つの川が運ぶ堆積物は、年間10億トン以上に及ぶ。そして、その大半が河口のベンガル湾岸に堆積し、新しい陸地を形成しつつあるというのだ。

■バングラデシュが今世紀末に水没の予測も

 一方、国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の予測によると、200本以上の川を有する同国は、2050年までに地球温暖化による海面上昇で陸地の17%を失い、環境難民が2000万人発生し、食糧生産高が30%程度減少するという。

 さらにNASAゴダード宇宙研究所(NASA Goddard Institute for Space Studies)のジェームズ・ハンセン(James Hansen)所長は、バングラデシュは今世紀末までに海底に沈むとの厳しい予想をたてている。

 こうした説に対し、先述のサーカー氏は、「海面の上昇と川の浸食が陸地を侵しているとしても、多くの専門家は川の堆積物による陸地の形成を考慮に入れていない」と指摘する。

■新技術の併用で陸地急増も可能

 バングラデシュ水資源開発委員会(Bangladesh Water Development Board)のラフマン(Mahfuzur Rahman)氏も、サーカー氏と同意見だ。「専門家らは、この10年間、バングラデシュは海中に沈むと主張し続けているが、これまでのところ、それを裏付けるようなデータはない。川の堆積物は、今後数十年間、いや数百年間、河口に堆積し続けるだろう」

 ラフマン氏によると、1950-60年代に湾岸に建設された複数のダムが堆積作用に拍車をかけている。新しいテクノロジーも併用すれば、堆積プロセスのスピードアップが図れると同氏は言う。(c)AFP