【10月17日 AFP】世界で最も稼ぎ出す女性歌手マドンナ(Madonna)は、25年にわたるキャリアの中で常にポップ歌手の象徴としての立場を守りつつ、繰り返し自分を改革してきた。

  ひねくれた処女、敬虔なキリスト教信者、牧場で働く女性、ディスコクイーン、バイセクシャルの露出好き、反戦活動家--マドンナがこれまで作り上げてきたわいせつで際どいイメージは、数え上げればきりがないほどだ。

■わずか35ドルの所持金で一人NYへ

 マドンナは1958年、ミシガン(Michigan)州北部に暮らす労働者階級の家庭で、イタリア系の父とフランス系の母の間に生まれた。母親は1963年に乳がんのため死去。1977年にニューヨークへ出てきた時、マドンナの所持金はわずか35ドルだった。デビューする前は、ヌード写真のモデル、ドーナツの販売店員、三流のバンドの歌手などをして生計を立てていたという。

 そしてついに1982年のシングル『Everybody』でデビュー。同シングルは大ヒットし、その後発売した『ラッキー・スター(Lucky Star)』、『ボーダーライン(Borderline)』、『Holiday』も大ヒットを記録した。

■スターダムを駆け上った80年代後半

 1985年の『ライク・ア・ヴァージン(Like A Virgin)』で、一躍世界的なスターに。翌年の『マテリアル・ガール(Material Girl)』も同様に世界中でヒットした。

 1989年の『ライク・ア・プレイヤー(Like a Prayer)』のミュージックビデオでは、カトリックの教えを学んだマドンナが胸元の深く開いたドレスで横たわる姿が登場。「一般家庭で見るには性的刺激が強い」として、社会で物議を醸した。

 20代の間にはコメディ映画にも出演したが、『マドンナのスーザンを探して(Desperately Seeking Susan)』や『フーズ・ザット・ガール(Who's That Girl?)』での演技は、歌ほど高い評価は得られなかった。

■多彩な分野で活躍

 アルバムを発売して自分のイメージを変化させるたびに、レコード売上げと映画出演料も上昇していった。1993年の官能サスペンス『BODY/ボディ(Body of Evidence)』の出演料は250万ドル(約2億9000万円)だった。
 
 1990年にはドキュメンタリー映画にも出演。『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ(Truth or DareIn Bed with Madonna)』。『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』は「ブロンド・アンビション・ツアー(Blonde Ambition Tour)」を収録したものだ。「自分が最高の歌手でもダンサーでもないことは知っている。でも、わたしはそんなことに興味はないの。わたしの興味があるのは、人の反感を買うこと」と、マドンナは同作中で語っている。

 1992年の写真集『Sex』は架空の世界のマドンナを写したもので、裸でヒッチハイクする姿なども含まれている。マドンナは『Sex』の中で、「自分の望むものを口にできない人は多い。だから、そういう人たちは、欲しいものを手に入れられないのよ」と書いている。
 
 数々の賞を受けた1998年のアルバム『レイ・オブ・ライト(Ray of Light)』では、ダンスミュージックの新境地を開いた。

 2003年には、児童書を執筆。ロンドンの子どもを描いた『The English Roses』はニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙の売上げランキングでトップに輝いた。

■ギネス認定「世界一高収入の女性歌手」に

 2006年には、年収5000万ドル(約58億円)、レコードおよびCD売上げ1億5000万枚を記録。「最も高収入の女性歌手」として、ギネス世界記録(Guinness World Record)に認定された。

 2007年には、ツアーを含めた年収が7200万ドル(約83億8000万円)に。米経済誌フォーブス(Forbes)はマドンナを、米国で最も影響力のある人物第3位に挙げた。

 私生活では1986年に俳優のショーン・ペン(Sean Penn)と結婚し、4年後に離婚。その後は、1990年の『ディック・トレイシー(Dick Tracy)』で共演した俳優ウォーレン・ベイティ(Warren Beatty)らと交際のうわさが流れたが2000年に、英映画監督ガイ・リッチー(Guy Ritchie)と再婚。その後は生活の拠点を英国に移し、1400万ドル(約16億3000万円)の豪邸を含む5件の邸宅をロンドン市内に購入した。

 1996年に、未婚のままLourdesちゃんを出産。2000年にはリッチーとの息子Roccoくんを産んでいる。2006年にはマラウィの男の子デビッド・バンダ(David Banda)君を養子に迎え、アフリカの支援計画にも参加した。

■過激なパフォーマンスは今なお健在

 1990年代後半、マドンナはユダヤ教の神秘主義思想カバラ(Kabbalah)に傾倒し始める。セックス・シンボル的なイメージから脱するのに成功したのもこの時期だった。

 しかし、過激なパフォーマンスはその後も健在で、2003年には「MTVビデオ・ミュージック・アワード・2003(MTV VMA 2003)」のステージで、ブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)とキスを披露し、世界中のメディアの注目を集めた。

 そして今週、コンサート運営大手ライブ・ネーション(Live Nation)と、総額1億2000万ドル(約140億円)の新たな契約を結ぶと発表。この契約により、デジタル時代を生き抜くのに苦戦を強いられているほかのアーティストたちを、大きく引き離すことになるとみられる。(c)AFP/Tangi Quemener