【5月20日 AFP】第64回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)のコンペティション部門に出品された初の3D作品『一命』。武士の切腹という血なまぐさい描写があり、流血シーンが苦手な人は注意が必要かもしれない。

『一命』は、江戸時代を舞台にした1962年の小林正樹(Masaki Kobayashi)監督作品『切腹』を三池崇史(Takashi Miike)監督がリメイクしたものだ。19日に同映画祭で公式上映された。

 暴力描写で知られる三池監督の作品には、『殺し屋1(Ichi the Killer)』、『オーディション(Audition)』、そして最近では『十三人の刺客(13 Assassins)』などがある。監督の基準では、『一命』の描写は比較的おとなしいものだという。

 公式上映前に行われた記者会見で監督は、バイオレンスの映画を作ろうとしたことはないと話した。ストーリーと登場人物が映画のすべてであり、結果として暴力的な作品になるという。

■ストーリーは?

 本作では、瑛太(Eita)と歌舞伎俳優の市川海老蔵(Ebizo Ichikawa)が主演を務めた。海老蔵は、敷地内で切腹したいと申し出れば同情され施しを受けるだろうと願い、武家の門をたたく貧しい浪人、半四朗を演じている。

 そんな半四郎に役所広司(Koji Yakusho)演じる家老が、以前にも病にかかった幼い息子のため同じように切腹を願い出たが同情はされず、言葉通り切腹をするよう追い込まれた浪人、求女(瑛太、Eita)の話をする。

 求女は竹光で腹を幾度も刺した。血が噴出。求女は砂利の上に倒れ、刀を構えて見下ろす介錯人に早くとどめをさすよう懇願する。

 求女は半四郎の娘婿だった、半四郎は敵討ちのためにやってきたのだ。物語はそこからクライマックスへ向かう。

■パルム・ドールを狙う初の3D作品

『十三人の刺客』のような決闘シーンが少ないことを残念に思うファンに対して三池監督は、3Dでそのような複雑なシーンを撮るには時間がかかるだろうと語った。

 一方で、映画の舞台となった武家屋敷は奥行きが少なく、3Dで表現しやすかったという。

『一命』はカンヌのコンペ部門に出品された初の3D作品となったが、日本の時代劇としては既にパルム・ドール(Palme d'Or)を獲得したものがある。1980年に『オール・ザット・ジャズ(All That Jazz)』とともに同賞を受賞した黒沢明(Akira Kurosawa)監督の『影武者』だ。

 しかし、『一命』と関係が深いのは、今年の同映画祭のオープニングで名誉賞を授与されたイタリア人映画監督ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)の『ラストエンペラー(The Last Emperor)』だろう。同作のプロデューサー、ジェレミー・トーマス(Jeremy Thomas)と、その音楽を手掛けた坂本龍一(Ryuichi Sakamoto)が『一命』にも参加している。(c)AFP/Robert MacPherson

【関連記事】三池崇史監督作『一命』、カンヌで公式上映
【動画】公式上映前のレッドカーペットに登場した瑛太&三池監督(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)