【8月30日 AFP】ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)仏大統領が20年近く市長を務めたパリ近郊の富裕地区ヌイイシュルセーヌ(Neuilly-sur-Seine)市を舞台にしたコメディー映画が、この夏フランスで予想外の大ヒットを記録している。

 作品のタイトルは「ヌイイサメール(Neuilly-sa-Mere)」。ヌイイシュルセーヌの地名に、貧民街の俗語である「おまえの母親(sa-Mere)」という語を掛け合わせた造語だ。

 主人公は14歳のイスラム系移民の少年で、生まれ育った治安の悪い地区を出て、富裕地区ヌイイシュルセーヌに住む工場経営者のおじ夫婦と暮らすようになり、その悪戦苦闘を描いたコメディー。少年は周囲の人が誰も自分の名前を正しく発音してくれない街で、荒々しい故郷を懐かしみながら、週末はカントリークラブで過ごし、上流階級の札付きの不良少年たちが牛耳る学校へ通う。

 1983年から2002年まで同市市長を務めたサルコジ大統領が、演説で使った政治的な引用句やキャッチフレーズなどが、作品全体にちりばめられている。将来、大統領になることを夢見ている主人公のいとこは、自分の部屋をフランス右翼の聖地に変え、カーラ・ブルーニ(Carla Bruni)大統領夫人のヒット曲を聴きながらジョギングをする。

 脚本を共同で手がけたDjamel Bensalah氏によると、これは社会的な記録映画ではなく、「ありがちな話を明るく笑い飛ばし、偏見で分断された社会の橋渡しをする、家族向けの軽いコメディー映画」だという。

 公開2週間で、すでに88万人近くが映画館に足を運んだという。(c)AFP