【5月15日 AFP】大都市生活における孤独感、人間であるとはどういうことか、どうすれば映画が人生に必要なあらゆることを伝えられるか――。第62回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で14日夜(日本時間15日朝)、コンペ対象外の「ある視点(Un Certain Regard)」部門で日本映画『空気人形(Kuki NingyoAir Doll)』が正式上映され、是枝裕和(Kore-Eda Hirokazu)監督が上映後のインタビューで作品のテーマについて語った。

『空気人形』は日本の短編マンガが原作で、等身大のダッチワイフ(空気人形)が「心」を持ち、レンタルビデオ店の店員と出会って恋に落ちるというファンタジー・ラブストーリー。人形は大都会で出会う人たちがみな自分と同様に心の中に空虚感を抱えていることに気づくが、他人との心をふれあいを通じて、その空虚さを埋めていく。

 是枝監督は、人形は自分の中に人間の息、つまり「魂」を感じることができるから人間になったのだと話し、この作品を見た人が、自分の空虚感を埋めるには他人とのふれあいが必要なのだと思うようになるかもしれないと語った。

 主演した韓国の女優ペ・ドゥナ(Bae Doo-Na)は、制作秘話に「人形は純粋で美しく汚れのない、生まれたての赤ん坊のような魂を持っている」と書いているが、是枝監督はさらに、人間になるということは人であるがゆえの不完全さにさらされることだと指摘。人形が赤ん坊の状態から女性に成長していく様子を描きたかったと説明した。

 映画では、人形が恋人と一緒にレンタルビデオ店で働く場面があり、そこでは現代から古典まで様々な映画が紹介される。これについて監督は、どれも自分の好きな映画で、自分が10-20代にかけて見た映画からたくさんのことを学んだように、人形も映画から多くのことを学んで成長していることを示したかったのだと述べた。

 また、韓国人女優がダッチワイフ役を演じることが第二次大戦中の従軍慰安婦を想起させると批判される可能性について聞かれると、監督は、リスクはわかっていたが、この役を演じられる日本人の女優を思い浮かばなかったのだと答えた。(c)AFP/Rory Mulholland