【11月19日 AFP】80年前、世界で最も愛される映画スターが誕生した。ウォルト・ディズニー(Walt Disney)のアニメ映画『蒸気船ウィリー(Steamboat Willie)』でスクリーンデビューを飾ったミッキーマウス(Mickey Mouse)だ。

■デビュー作は『蒸気船ウィリー』ではなかった

 同作が公開されたのは1928年11月28日。公式にはこの日がミッキーの誕生日とされている。だがその数か月前、ディズニーが考え出すしたミッキーはすでに短編アニメ『プレーン・クレイジー(Plane Crazy)』に登場していた。  初期のミッキー映画の中で『蒸気船ウィリー』が最も有名になったのは、サウンドトラック方式を採用した世界初の音声映画だったためだと、カリフォルニア大学デービス校のエリック・スムーディン(Eric Smoodin)教授(映画学)は指摘する。 「ミッキーは『蒸気船ウィリー』公開から1、2年で世界一有名なスターになった。だから、実際のデビュー作ではなくても、大スターとしてのミッキーの誕生は『蒸気船ウィリー』だといわれている」

 スムーディン教授によると、1930年代でミッキーと肩を並べるくらいの世界的スターといえば、チャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)しかいないという。

■ミッキーマウス誕生の秘話

 ミッキーの誕生は、偶然によるものだった。ディズニーが最初に考案したアニメーションのキャラクターは「オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット(Oswald the Lucky Rabbit)」だったが、1927年にこのキャラクターの権利を喪失。ディズニーは新たなキャラクターを考えなければならなかった。

 そこで生み出されのが「モーティマー・マウス(Mortimer the Mouse)」だった。しかし、妻がミッキーという名前の方がよいと言い、ディズニーがそれに従ったというのは有名な話だ。

『蒸気船ウィリー』はストーリーが不明瞭で道徳的な問題点もある上、セリフの大半が意味不明だ。だが、この作品は、サウンドトラック方式を採用したアニメ映画の金字塔となった。

 約7分の作品の中で、キャプテン・ピートから操縦室を追い出されたミッキーは、岸にいるミニーマウス(Minnie Mouse)の下着にクレーンを引っかけて船に引き上げる。それから、ヤギの体内から流れるフォークソング「オクラホマ・ミキサー(Turkey in the Straw)」の音楽に合わせて、ネコのしっぽを握って振り回し、ガチョウの首を絞め、母乳を飲む子ブタたちをキーボード代わりに演奏する。

 ディズニーのウェブサイトによると、この作品のサウンドトラックは、15人のバンドを使って録音されている。ミッキーの声はディズニー自らが担当したという。

■米国人の心に流れるミッキーのテーマ曲

 その後のウォルト・ディズニーは1930年代にカラーアニメと3D技術でも世界をリードし、1946年には世界初のステレオサウンド方式を採用した映画『ファンタジア(Fantasia)』を公開。1932年にはアカデミー賞特別賞を受賞している。

 これまでに制作されたミッキー映画は120本以上。1950年代にはテレビ番組『ミッキーマウス・クラブ(The Mickey Mouse Club)』が登場した。「M-I-C、K-E-Y、M-O-U-S-E」というミッキーのスペルを歌詞に乗せたこのテーマソングは、あらゆる世代の米国人の心に刻み込まれているという。現在では『ミッキーマウス・クラブハウス(The Mickey Mouse Clubhouse)』という番組が放映されている。

 白い手袋をはめ、黄色い靴をはいたミッキーの姿は、現在ではTシャツからおもちゃまで様々な場面に登場し、世界各地でミッキーの展覧会が行われている。(c)AFP