【パリ 13日 AFP】「『映画を1日に6本見る』なんて、いい仕事」と思う映画ファンも多いだろう。しかし、山と積まれた映画の中から極めて少数の優秀作品を選ぶためだとすれば、そうとばかりもいっていられない。それは、「カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)」の最高賞「パルム・ドール(Palme d’Or)」を争う作品を選ぶ作業に他ならないからだ。

■選ばれた22作品

 今年も、世界最高の舞台での上映を目指し約4000本が出品され、重圧のなか、12人の審査員がそれらを見続けた。こうして22作品が選ばれ、5月16日から27日まで開催されるカンヌ国際映画祭で上映される。

 これら選りすぐりの作品を鑑賞するのは、世界的批評家やエンターテインメントメディア、そして作品の宣伝と配給、大ヒットした場合の大金を約束する数千人の映画業界実力者たちだ。

 「カンヌで上映されると、その映画について『世界が語り始める』」と話すのは、フランスの映画配給・制作会社「MK2」のNathanael Karmitz社長(28)。同社はコンペティション部門に出品された22本のうちの1本、ガス・ヴァン・サント(Gus Van Sant)監督の『Paranoid Park』を手がけた。

 「(ミシュランの)三つ星を狙う偉大なシェフのような気分。アーティストは常に疑問を持ち続けるもので、一般の人々とプロの反応を知りたがるものだ。われわれプロデューサーとしてもうれしい」と、Karmitz社長。

■複雑な選考システム

 しかし、選考プロセスは常に民主的というわけではない。映画制作者と配給会社が映画を出品するようになった1972年までは、各国政府が出品作品を選出しており、審査団に圧力がかけられることもあった。

 カンヌでは、2つの委員会が上映作品を選定する。1つは、芸術監督のティエリー・フレモー(Thierry Fremaux)率いる外国映画の選定委員会で、メンバーにはジャーナリストのGuy Braucourt氏とPaul Gransart氏、映画制作者のVirginie Apiou氏、カンヌ国際映画祭のGilles Jacob運営委員長の息子で映画専門家のLaurent Jacob氏が名を連ねる。

 もう1つの委員会は、毎年自動的にパルム・ドール候補となるフランス映画3本を選ぶが、その構成は公表されていない。

 委員会は合議制だが、最終的にフレモー委員長の判断が強い影響力を持つ。2001年の芸術監督就任以降、フレモー氏は「セルロイド・イーター(celluloid eaters)」と呼ぶ若い映画マニア7人による「もう1つの委員会」を設置し、非公式に出品された作品の審査にあたらせている。2002年に「ある視点(Un Certain Regard)部門」のグランプリを受賞したタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン(Apichatpong Weerasethakul)監督の『ブリスフリー・ユア-ズ(Blissfully Yours)』は、この委員会により選出された。

■バイク便で会場に到着?

 フレモー氏は映画祭の準備期間中、世界中をまわり新しい才能の発掘に努めているが、たいていの場合、出品作品は制作途中の段階で決まる。

 2004年、香港のウォン・カーウァイ(Wong Kar Wai)監督の作品『2046』のフィルムが空港から大勢の批評家が待つ会場までオートバイのエスコート付きで急送されたのは、このためだ。なお今回は、中国人監督の作品として初めて、ウォン監督の『My Blueberry Nights』がオープニングで上映される。

 写真は16日のオープニングで上映されるウォン監督作品『My blueberry nights』の1シーン。英国人俳優ジュード・ロウ(Jude Law、左)と歌手のノラ・ジョーンズ(Norah Jones、撮影日不明)。(c)AFP/BOSSA-NOVA/DARIUS KHONDJI