【4月28日 AFP】太陽の光が降り注ぐフィリピン・セブ(Cebu)島に拠点を置くインテリアデザイナー、ケネス・コボンプエ(Kenneth Cobonpue)。国際的なデザイン誌から「アジアのインテリア業界を代表する先駆者」と賞賛される彼の作品は、世界各国の高級デザイン市場に進出している。

■米国や欧州で修行

 現在40歳のコボンプエはセブ島生まれ。地元でデザイナーとして活躍していた母から才能を受け継ぎ、工業デザイナーを志した。1980年代には、米国のプラット・インスティテュート(Pratt Institute)でデザインを専攻。さらに、ヨーロッパにわたり、イタリアやドイツの工房で1994年まで経験を積んだ。

 その後、米国のデザイン会社で仕事を得ようと試みたが、職が見つからず、1996年にフィリピンに帰国した。「働く場所はどこにもなかった。ハーバードの卒業生ですら、タクシードライバーをしていた時代です」とコボンプエは語る。「そこで、地元セブ島にあった母の家具工房を引き継ぐことを決意しました」

■地元に戻って・・・

 セブ島に帰ってからは、ラタンやヤシなどの地元特有の植物を使い、今までとは異なるデザインに挑戦した。自らの名を冠したブランドから発表した、手作業で丁寧に作り上げた現代的なデザインの家具は、次第にセブ島内に広まっていった。

 最初に注目を浴びたのは、スチールのフレームと枝編み細工を組み合わせたベッドや椅子のコレクションだった。さらに、ラタンを折り曲げて製作する伝統的技法を使った家具や、古代のボートを連想させるようなコクーンの形のベッドを考案し、世界中から高く評価された。「あらゆるものからインスパイアされます。私たちの目に映る全てのものに、美が宿っているのです」

■ハリウッドからの人気
 
 熱心なアートコレクターでもある俳優ブラッド・ ピット(Brad Pitt)も、コボンプエのベッドを購入。その後俳優のジョージ・クルーニー(George Clooney)や女優ジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)をはじめとしたハリウッドセレブがこぞって作品を購入した。

 コボンプエは「最初は、ハリウッドで急に人気が出たことをどう解釈していいかわかりませんでした。驚くほどの勢いでした」と振り返る。「セレブが愛用しているから評判が良いのではなく、アーティストとして作品自体が認められるようなものを生み出さなくてはと思いました」

「必死に稼いだお金で一脚の椅子を購入してくれる一般の方からの称賛が一番重要だと思っています。ガソリンスタンドの店員が、テレビで僕を見たときに、フィリピン人であることに誇りを感じたと話してくれたこともありました」

■次世代の教育にも力を

 2人の子どもの父親でもあるコボンプエ。成功を手に入れてもなお、彼はしっかりとフィリピンに根付いている。現在は、今後に地元を背負っていくであろう次世代の若手デザイナーの育成に励んでいる。また将来的には、デザイン・アカデミーを創立するという夢がある。「私たち全ての才能を活かし、フィリピンのデザイン・シーンを盛り上げるべきですが、そのような状況は未だ実現していません。しかし、私たちにはポテンシャルがあります。そのためにはデザイン教育や産業が必要なのです」

 さらに今後は、洋服などのさまざまな分野にデザインの幅を広げていく予定だ。「現在は、個人プロジェクトとして竹を仕様したコンセプトカーのデザインに挑戦しています。どうなるか見ものですよ」と語った。(c)AFP/Jason Gutierrez

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