【3月7日 MODE PRESS】ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)社がイタリアの大手アパレルメーカー、シンヴ(Sinv.)社と提携した新ブランド「カミングスーン(COMING SOON)」が今年秋口から世界展開で発売される。日本のファッションブランドが欧州の服飾メーカーに大規模なライセンス生産を提供するのは初めて。海外ブランドに席巻されてきた日本のファッション産業にとって、この新ブランドは現状打開へのはずみともなりそうな快挙だ。なお、日本国内での発売は来年(シーズン未定)から。

■日本ファッションが世界に誇るDNA

 カミングスーンは08年秋冬シーズンからスタートで、メンズ・アパレル170品番、ウィメンズ・アパレル200品番に加えアクセサリー類メンズ・ウィメンズ合わせて約80品番のライン構成。カジュアルラインが基本だが、きちん構築されたシンプルなデザインや洗練されたディテールへの配慮、また縫製への拘りなどに、ヨウジヤマモト社らしい視線とこだわりを感じさせる。軽快でおしゃれなカジュアル、ストリート感覚は日本ファッションの世界に誇るDNAでもある。

 「ヨウジヤマモト」のコレクションラインが計算の行き届いたトータルコーディネートの美しさを提案するのに対し、このブランドは各アイテムの自立性が高く、着る側に単品コーディネートの工夫の余地をあえて大幅に委ねているように見える。デザイナー名をうたわないのも、そうした姿勢の反映なのかもしれない。

■スーパーカジュアル・コンテンポラリー・ブランド

 ヨウジヤマモト社では「スーパーカジュアル・コンテンポラリー・ブランド」と表現している。機能的でシンプルだが入念に構築されていて、着心地がよくて、流行に左右されず自らのセンスでコーディネートして長く着られる服。決して高価すぎないがクオリティーは高くて、作る側にも着る側にもラグジュアリーなファッション感覚が必要とされる。「カミングスーン」というブランド名には、これからの時代に主流になるかもしれないそんな感覚の服、という暗示も込められているような気にもさせられる。

■映画・ビデオアートとの繋がり

 もう一つの暗示は、映画やビデオアートとのつながりだろう。今回のキャンペーンビジュアルは映画の予告編のようなショートフィルムだ。いま人気のイギリス人写真家マックス・ヴァデュクル(Max Vadukul)が監督したモノクロのフィルムは、二人のダンサーがロンドンの街を舞台にカミングスーンの世界を表現するような印象的な踊りを展開している。
 「恐れを感ずることなく、暗闇でも抜け出せること。男女の執着、彼らがお互いに理解し、理解できず苦しみながらも、それぞれが惹き合う状態を表現するパフォーマンス」とヴァデュクル。

■欧州・米国などで受注

 今年1月にパリでローンチパーティーが開かれ、パリのほかミラノ、ロンドン、アントワープ、ベルリンなど欧州14都市とニューヨーク、ロサンゼルスで受注が行われている。売り上げ目標はライセンス期間の10年間で卸売りベースで計2億ユーロ。販売の地域別構成は、欧州60%、アジア30%、北米10%を予定している。(c)上間常正