【9月26日 AFP】伊アパレル大手ベネトン(Benetton)の広告キャンペーンで知られる写真家オリビエーロ・トスカーニ(Oliviero Toscani)が24日に開始した、センセーショナルなビジュアル広告による「やせすぎへの警鐘」キャンペーンに対し、同国政府およびファッション業界から賛否両論の声が巻き起こっている。

 やせ細った若い女性の裸体の上に「やせすぎに“No”」というスローガンが描かれたこの広告は、伊アパレル「NOLITA」がスポンサーとなり、08年春夏ミラノ・コレクションの最中である24日、全国紙レプブリカ(La Repubblica)に見開きページで掲載された。このほか、イタリア全国の広告看板にも掲示されている。

■国内から賛否の声

「トスカーニの手腕は見事。実に効果的なキャンペーンだ」と語るのは、イタリアのエンマ・ボニーノ(Emma Bonino)欧州政策相兼貿易相。リビア・トゥルコ(Livia Turco)保健相も同広告に称賛を贈り、支持する意向を示している。

 一方、ローマにある摂食障害センターのエミリア・コスタ(Emilia Costa)所長は、このキャンペーンが悪意ある人々に悪用される可能性があることを指摘。内分泌学者のFabrizio Jacoangeli 氏は、「この広告キャンペーンの効果がどれほどか判断しがたい」としながらも、拒食症患者の間でこの写真のような女性になろうとする「競争」が生じる危険性を懸念している。

■ファッション界の反応は?

 ミラノのファッション業界は、この広告キャンペーンを肯定的に捉えている。だが、デザイナーのドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)とステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)は、「ついに真実が語られただけのこと。拒食症のまん延はファッション業界の責任ではなく、精神的な問題だ」と手厳しいコメントを寄せた。一方、ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)は、ファッション・ショーの最後に「強烈なビジュアル広告を使ったこのキャンペーンは、絶妙のタイミングで開始された」と述べている。。

■写真モデルが語る「やせ過ぎ」の実態

 この広告写真のモデルになったのはパリ在住の仏女優イザベル・カーロ(Isabelle Caro)さん(27)。13歳の頃から拒食症に苦しんでいるカーロさんは「やせすぎは全然美しくないし、死ぬ危険さえある」と話す。写真のモデルになった理由は、若い女性たちにやせ過ぎることの危険性を分かってもらいたかったからだという。「若い女性たちが、ファッション誌に出てくるきれいな服やヘアスタイルの背後に、何が隠されているのかを考えるきっかけになってほしい」

 カーロさんは15年以上にわたり、拒食症による体重減少が危険域に達するたびに入院を繰り返している。現在、身長165センチに対し、体重はわずか32キロ。だが、この5年間で5キロ増え、写真の撮影当時からも2キロ増えているそうだ。(c)AFP

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