【6月12日 AFP】毛皮の再流行に伴い、毛皮の違法取引が増加している。オランダ・ハーグ(Hague)で開かれた野生動物取引規制のための世界フォーラムで7日、野生動物犯罪の専門家が警告した。

■流行とともに増える違法取引

 171か国が参加する、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)事務局に務める野生動物犯罪の専門家ジョン・セラー(John Sellar)氏は「残念なことに、ファッションの流行には周期があり、毛皮の流行がまたやってきた」と語る。「中国西部の状況は、ヒョウ(leopard)、ユキヒョウ(snow leopard)、トラ(tiger)の毛皮の違法取引が深刻なレベルとなっている」

 ファッションの流行に敏感な人々から毛皮が「時代遅れ」とされていた時期には、違法取引も減少していた。だが毛皮の再流行にともない、近年では違法取引が増加してきたという。

■減少する野生動物

 チルー(チベットアンテロープ、Tibetan antelope)もファッションの犠牲となっている。チルーの毛で作ったアンダーコートはシャトゥーシュ(Shahtoosh)と呼ばれ、珍重される毛織物だ。最も暖かくて、柔らかい、最高級品とされている。チルーの毛は生きたものから取れず、2メートルの女性用ショールを作るためには、3頭のチルーが必要だ。
 
 スイスの野生動物犯罪の捜査員は最近の摘発で、サン・モリッツ(St Moritz)のスキー・リゾート地の店から、1枚2万ドル(約240万円)で売られていた、ぜいたくなチルーのショール、複数枚を押収した。Wildlife Organisationsによれば、20世紀の初めに100万頭いたチルーは現在、7万5000頭まで減少している。

■犯罪摘発の難しさ

  国際刑事警察機構(Interpol)のピーター・ヤンガー(Peter Younger)氏は「国境事務所では、野生動物取引が、麻薬、武器の密売、人身売買といった諸問題の一つとしてしか扱われていない。野生動物犯罪に対して優先的に取り組まねばならない」とコメント。

 高い利益が得られ、逮捕のリスクが少なく、たとえ逮捕されても比較的軽い処罰で済むことから、野生動物の違法取引を一掃することは難しいと、セラー氏は強調する。

 「野生動物犯罪による利益がどれほどのものか、正確な数値を出すことは難しい」とセラー氏。また、キャビア取引へのロシア人マフィアの関与といったような組織犯罪、野生動物取引がされる特定の地域があるが、明確に把握することは難しいとのこと。

 「われわれは単に気付いていないだけなのだ。この犯罪はとてつもなく幅広いものだ。絶滅危惧(きぐ)種のリストに載っていることを知らずに商品を手に取ってしまう観光客もいれば、組織犯罪もある」とセラー氏。(c)AFP/Pierre Verdy