【10月11日 AFP】欧州の航空防衛大手EADSと英BAEシステムズ(BAE Systems)は10日声明を発表し、両社の間で進められていた合併交渉を打ち切ったことを明らかにした。

 合弁すれば企業価値450億ドル(約3兆5000億円)規模の世界最大の航空宇宙企業が誕生するとみられていたが、EADSのトム・エンダース(Tom Enders)最高経営責任者(CEO)は社員に宛てた手紙の中で、ドイツ政府の反対は想像を超えるほど強く、仏英政府の努力も実らなかったと述べた。

 英国の金融市場規制で交渉期限は英国時間10日夕までとされており、それまでに英国の規制当局に交渉がまとまったことを報告するか、交渉期限の延期を申請する必要があった。仏政府による合弁会社株の保有に制限を課すことをフランスが受け入れたという情報もあり、9日夜には交渉期限が延期されるという見方も出ていた。

 しかし消息筋によるとドイツは、合弁会社の民間部門の本社がEADS傘下のエアバス(Airbus)の本社がある仏南部トゥールーズ(Toulouse)に完全に移り、防衛部門の本社がBAEシステムズの本社がある英ロンドン(London)に移って新会社への自国の影響力が小さくなることを嫌ったと言われている。

 当初はフランスが英国の要求受け入れに難色を示したことが交渉の障害になっていたとみられていた。ドイツは交渉の中でフランスと同数の議決権を得たが、最後まで一貫して合併に対する警戒感を持ち続けた。

■米国も推移見守る

 両社は民間・防衛分野で米ボーイング(Boeing)を超える規模の企業になることを目指していたが、今後も個別の企業として存続することになる。交渉が破談に終わったことでBAEシステムズは別の企業に買収されたり、分割して売却されたりする可能性もあるとみられている。

 交渉打ち切りのニュースを受けてパリ(Paris)株式市場でEADSの株価は前日比5.29%高の27.48ユーロに上昇したが、ロンドン市場でBAEシステムズ株は同1.38%安の320.9ペンスに下落した。

 EADSは米国市場と、今後拡大が予想される民間機市場での事業を拡大して防衛部門を補うとともに、航空業界で一般的な米ドル建ての取引を増やして決済通貨の幅を広げることを目指していた。

 BAEシステムズは米防衛産業に商品を供給していたため米当局も合併交渉の行方を見守っていた。米政府は国防分野の調達に関わる企業の経営への外国政府の関与に慎重な姿勢をとっている。

 BAEシステムズは主にオーストラリア、英国、インド、サウジアラビア、米国で8万3600人を雇用しており、2011年の売上高は191億5400万ポンド(約2兆3920億円)。EADSは世界170か所以上で約13万3000人を雇用しており、2011年の売上高は491億ユーロ(約4兆9200億円)。(c)AFP/Patrick Rahir