【9月1日 AFP】日本車の発売イベントの招待に毎回、米国の知事たちが応じるわけではない。しかし、予定よりも数か月早くイリノイ(Illinois)州に進出した世界初の量産型電気自動車、日産(Nissan)「リーフ(Leaf)」を、パトリック・クイン(Pat Quinn)知事は手放しで歓迎した。「イリノイ州は電気自動車とグリーンエコノミーを推進する準備をしてきたが、その努力が報われた。電気自動車の技術に投資することで、イリノイ州と日産はわが州の交通の効率性、持続可能性、経済性をさらに高めることになる」

 2010年12月に日本と、米国の一部で発売され、今年に入り欧州でも販売が開始されたリーフは、すでに納品まで数か月待ち、米国では35万件の資料請求があるなど、大きな脚光を浴びている。しかし、潜在的顧客の信頼をどれだけ勝ち得るか、あるいは温室効果ガス排出の抑制にどれだけの効果をもたらしうるかは実のところ未知数だ。

■リーフは「大勢の人のための車」

 リーフの最大走行距離は約160キロ。米国人ユーザーの大半は日常そんなに走ることはないが、プラグイン・ハイブリッド車とは異なり、リーフは100%電気自動車のため、普通のガソリンスタンドにはない充電設備が必要な点がネックだ。しかし、リーフのマーケティング・ディレクター、ブライアン・マラングノ(Brian Marangno)氏は「すべての人のための車ではないかもしれない。けれど、大勢の人のための車であることは確かだ」と、そんな「走行距離不安」を払しょくし、リーフはとにかく「大きな転換点だ」と強調する。

 コンサルティング会社JDパワー(JD Powers)では、今年の米国での電気自動車の販売台数を1万2000台と予測している。1200~1300万台規模の米自動車市場全体から見ればわずかだ。同社アナリストのマイク・オモトソ(Mike Omotoso)氏は、2016年には米国で10万台、世界で80万台規模に電気自動車市場は拡大するとみるが、たとえそうなったとしても、米国自動車市場の0.6%、世界市場の1.3%でしかない。

 100%電気自動車よりも柔軟性の高いハイブリッド車のほうが大きな割合を占めるという予測もある。同じくJDパワーは、2016年の自動車市場におけるハイブリッド車について、米市場では7%の110万台、世界市場では5%の310万台を見込んでいる。

■電気自動車成長の鍵は「全ラインナップの燃費向上」

「ハイブリッド車や電気自動車の成長を遅らせている要因のひとつは、ガソリン車の燃費が非常に向上していることだ」とオモトソ氏は説明する。リーフが3万3000ドル(約250万円)するのに対し、1万5000~2万ドル(約115万~153万円)の価格帯には、リッター当たり約17キロ程度の燃費のガソリン車がいろいろそろっている。「依然、経済がおぼつかない中では皆、安上がりなソリューションを求めるものだ」

 しかし、だからこそ自動車メーカーにとっては、自社製品のラインナップ全体の燃費を向上させることが鍵となると、米環境団体、自然資源防衛協議会(Natural Resource Defense Council)の運輸アナリスト、Luke Tonachel氏は語る。そうした中で「自動車のクリーン性と燃費を高める技術がひとところに凝縮しているのが、電気自動車だ」
 
 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が7月に発表した厳格な燃費規制案は、2030年までに米国の石油消費量を1日当たり300万バレル、二酸化炭素排出量を年間5億5000万トン削減するという目標の達成を後押しするだろう。(c)AFP/Mira Oberman