【8月18日 AFP】日本の2010年4~6月の国内総生産が過去3四半期で最も低い成長率を記録した中、アナリストらは、日本経済の弱い回復基調を保護する必要があるとともに、巨大な規模を持つ中国経済の急成長から日本経済が利益を引き出すよう取り組むべきだと提言する。

 内閣府が16日に発表した10年4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率(速報値)は、年率換算で市場予測の2.3%を下回り、前期(1~3月期)の4.4%から0.4%に急落した。

 日本は戦後の高度成長で米国に次ぐ世界第2位の経済大国となり、その地位を40年以上維持してきた。しかし、1990年代のバブル崩壊以後の停滞を経て、輸出鈍化と横ばいの国内消費で経済が低迷する中、ついに中国にその座を譲った。

 いま日本は、回復を危うくさせている経済的苦境に手当てをする一方で、中国の急成長から利益を引き出すよう努めなければならないという重圧の中にいる。

■中国の成長を利用せよ

 野村證券(Nomura Securities)チーフエコノミストの木内登英(Takahide Kiuchi)氏は「アジアの中心は日本から中国へ移った。いま日本に必要なことは、中国とアジア全体の成長を利用することだ」と述べる。

 三菱総合研究所(Mitsubishi Research Institute)シニアエコノミストの武田洋子(Yoko Takeda)氏は「両国の人口の差を考えれば驚くことではない」と語る。国際通貨基金(International Monetary FundIMF)によれば、国民1人当たり所得では、日本はまだ中国の10倍もある。

 武田氏は「中国の成長は、日本経済にとってマイナスというよりもプラス。中国は日本の輸出企業の市場として成長する」と述べる。10年6月の日本の中国への輸出は、前年同月比22%増だった。また、木内氏は小売や保険などサービス業部門でも、中国市場の可能性を精査すべきだと提言する。

■日本経済の抱える問題

 中国の急成長は、中国が貧困に苦しむ共産主義体制から世界的な経済大国へと大きくその姿を変えるなかで、経済大国の交代が起きていることを反映するものだが、一方で、日本経済を再生させる必要性を示すものである。

 木内氏は、世界的な金融危機からの急速な回復がいつまでも続くということはなく、日本経済の回復の足取りは鈍化していると述べる。政府の景気対策が終わりつつある中の円高で、日本経済はさらにぜい弱になっている。

 日本経済は約1年間続いた深刻な景気後退から前年ようやく脱却し始めたところだが、弱い回復基調の中、デフレや大量の国債残高、低調な内需、輸出鈍化、円高などの問題に悩まされている。

 アナリストらは、日本経済の再生には輸出依存を減らし、内需を拡大して外国からの投資を呼び込まなければならないと指摘する。

 また、対ドルで15年ぶりの高値を記録するほどの円高は、ソニー(Sony)や任天堂(Nintendo)、トヨタ自動車(Toyota Motor)などの海外での業績に打撃を与えている。

 木内氏は、政府が日本銀行(Bank of JapanBOJ)に金融緩和策をとるよう働きかければ円高の影響を和らげることができると述べ、日本の輸出企業を助ける唯一の方策は金融緩和だと語る。

 日銀は長らく政策金利を0.1%に据え置いてきた。しかし、円高が世界経済とドルへの懸念から生じている以上、日銀の選択肢は少ないとアナリストらは指摘した。(c)AFP/David Watkins